[ オピニオン ]
(2016/12/30 05:00)
政府による東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束が混迷を深めている。「汚染者負担」の原則では収まらない大きなリスクに対し、どう向き合うかは今後の課題でもある。
政府は、原発事故の被害者への賠償や除染、廃炉などの費用に21・5兆円が必要との見通しを明らかにした。従来の倍近い額に膨らむため、東電だけでなく原発を持たない新電力を含めたすべての電気の使用者に一部負担を求める方針だ。
さらに事故を起こしていない原発の廃炉費用も積立金が足りず、この積み増しも電力使用者が負担する方向という。一方、帰還困難区域の復興対策のうち除染対策関連費用については税金の投入が決まっている。
環境汚染に対する責任は汚染者が負うのが原則だ。しかし原子力損害賠償法では「異常に巨大な天災地変」の損害は「その限りではない」と定めている。政府が、この判断を明確にしないまま費用負担の議論を進めてきたことが国民各層に不信感を生じさせている。新電力大手の首脳は「誰かが負担しなければならない費用なら、まずは責任のあり方を整理してもらいたい」と話している。
くしくも今年は、日本の公害の原点である水俣病の公式確認から60年目だった。当時の政府が責任をあいまいにしたまま経済性を優先した結果、住民に取り返しのつかない深刻な健康被害をもたらし、結果として経済性まで失うことになった。
環境省の資料には「有害物質による環境汚染は、健康被害をはじめ、生活環境の破壊など重大な被害をもたらします。水俣病の事例から、経済性を優先し環境への配慮が欠けた活動が、健康被害をはじめとする種々の深刻な被害を与え、その後の被害の回復も容易でないことを教訓として得ました」とある。この教訓が生きていない。
産業界の立場では、環境汚染などのリスクを抱えた企業は万一の際、迅速な対応で被害を最小限に食い止める手だてが求められる。大きすぎるリスクに対しては、他と連携した対策を明確にしておく必要がある。
(2016/12/30 05:00)
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