[ オピニオン ]
(2016/12/13 05:00)
総合化学各社の石油化学事業が好調だ。各社とも、この機に競争力を高める積極投資を検討すべきではないか。
石油化学工業協会のまとめた10月までの国内エチレン製造設備の平均稼働率は、35カ月連続で90%を上回った。実質フル稼働状態だ。シンガポールの大型プラントの設備トラブルでアジア地域の市況が引き締まったのに加え、内需も堅調が続く。
ただ石化協の淡輪敏会長(三井化学社長)は「フル稼働が長く続くと、オペレーションなどストレスがかかるのは間違いない」と懸念を示す。
2011年頃から中国などの新興国で石化設備の新増設ラッシュが起きた。コスト高となった日本勢は汎用品を輸出する事業モデルが成り立たなくなり、再編に動いた。ここ2年間で国内のエチレンプラント3基が停止。それに付随する誘導品設備の統廃合も進んだ。社内外からの厳しい視線にさらされる“冬の時代”だったが、いまやその寒さもかなり和らいだ。競争力強化の絶好のチャンスだ。
最近の業績好調をうけて、出光興産は姉崎工場(千葉県市原市)のエチレン製造装置の大規模改修を決めた。主原料でナフサ(粗製ガソリン)より安価なプロパンの使用比率を高め、年間10億円のコスト削減を見込む。こうした攻めの投資への転換を評価したい。
一方で石化業界は、新たな問題に直面している。国内で最初の石化コンビナートが稼働したのが1958年。その後の20年間で現存する大半のエチレン設備が各地で立ち上がった。今後“50年選手”が続出する。
各社は毎年のように一部設備を更新しているものの、既存プラントをどこまで稼働させるかという未知の領域へ足を踏み入れることになる。産業保安という面でも、設備に余力を与える投資は望ましい。
業界には「個社でプラントのリプレースや新増設はリスクが高すぎる。国の旗振りを期待したい」(化学大手幹部)という声もある。石化業界が再び競争力を失えば、製品を全量輸入に頼る未来を招きかねない。
(2016/12/13 05:00)