[ オピニオン ]
(2016/12/27 05:00)
古代中国の楚漢(そかん)興亡―すなわち項羽と劉邦の中原の覇権争いの物語は「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌(そか)」など幾多の故事に彩られる。その名場面である「鴻門の会」と「垓下(がいか)の戦い」は、ともに12月の出来事とされる。
暦法が大きく違うから、現在の何月にあたるかはあいまいな部分もある。ただ古代の大きな軍事行動は農閑期が一般的。寒風吹きすさぶ黄土の荒野は英雄譚(たん)によく似合う。
鴻門から垓下まで4年間。知勇を尽くした戦いは現代中国の指導部よりも、世界の中原と言うべき米国の大統領選に例えられるかもしれない。戦えば負け知らずの蓋世(がいせい)の英雄で、最初から圧倒的に優勢だった項羽は一転して敗亡した。“まさか”の結末は、クリントン氏を思わせる。
対する劉邦は、戦には弱くて酒色が好き。失言も多かったが、なぜか部下の気持ちをつかむ魅力があった。常に名分より実利を優先し、食糧を蓄えた敖倉(ごうそう)を囲い込んで動かない経済感覚の持ち主でもあった。こちらもトランプ氏の勝利に通じると言えまいか。
劉邦は漢王朝を開き、高祖として後代にたたえられた。トランプ大統領の時代はこれからだが、外面で予断を持つなと歴史は教える。まずは1月の就任演説を待ちたい。
(2016/12/27 05:00)