[ オピニオン ]
(2017/1/5 05:00)
短い正月休みが明けて迎えた2017年。今年の日本経済はどうなるだろう。足元の景気は長らく続いた踊り場を脱し、緩やかな回復に転じている。これがどれだけの持続性を持つかがポイントとなるが、少なくとも春先まで、うまくいけば年央まで日本経済が成長を続けることが期待できそうだ。
年末に発表された月例経済報告では景気の基調判断が1年9カ月ぶりに上方修正されたほか、12月調査の日銀短観では代表的な指標である大企業製造業の業況判断が1年半ぶりに改善を示すなど、景気が上向きなのは疑う余地がない。これは、トランプ次期大統領の経済政策「トランポノミクス」に対する期待感から、米国が「トランプ相場」に沸いていることに負うところが大きい。
年明け後も、幸いなことに円安・株高の恩恵がしばらく続くとみられるなか、人手不足を背景とした雇用所得環境の改善による個人消費の増加、事業規模28兆円にのぼる新経済対策による公共投資の増加など、内需が景気をけん引して、成長が加速するとみて間違いないだろう。
17年度に入ると、安倍晋三政権が掲げる名目国内総生産(GDP)600兆円の目標に向けて、アベノミクスの「新3本の矢」が動き出す。未来投資会議がまとめる「日本再興戦略」に沿い、第4次産業革命を柱として新たな市場が創出されることが期待され、景気を下支えするものとみられる。それを支えるのが史上最高の97兆4547億円にのぼる17年度予算。政府は実質GDPで前年度比1.5%増の強気な経済見通しを立てている。
一時は日本経済のけん引役を果たした外需は、このところ脇役に回っているが、新興国経済の持ち直しに伴い、回復の可能性がある。輸出は中国経済の減速が鮮明になっているものの、米国景気が堅調に推移し、さらに力強さを増すとみられることから、回復基調をたどる見込み。輸出先としての米国のウエートが高まるだろう。
リスク要因として挙げられるのがトランポノミクスの行方。ドル高・株高のトランプ相場は、短期的には景気押し上げ要因。だが、いかんせん期待先行にすぎず、中長期的には不安材料でもある。法人税を35%から15%に引き下げる大型減税や、今後10年間で1兆ドルという大規模インフラ投資による財政の悪化が懸念され、長期金利が上昇すれば、米国経済が減速するのは必至。そうなれば、当然日本経済にも余波が及ぶ。
また、米国でドル高・株高・金利高が進むと、新興国に流れていた資金が米国に還流し、新興国経済を疲弊させることになり、それが世界経済の混乱要因になる恐れもないとはいえない。
このほか、好材料のはずの円安も、行き過ぎると輸入物価の上昇を招き、個人消費に冷や水を浴びせることになるため、目が離せない。原油価格の上昇がそれに追い討ちをかける可能性もあり、要注意だ。
海外要因で日本経済が混乱に陥ったとしても、政府は今度こそ成長戦略を完遂し、企業収益の改善、設備投資の増加、雇用所得環境の改善という好循環を実現してほしい。「アベノミクス」の限界がささやかれる今、成長戦略を推し進める以外に日本経済を成長させる道はない。長期安定した基盤の上に立つ安倍政権なら、それが可能だろう。
(論説委員・川崎 一)
(2017/1/5 05:00)