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[ 科学技術・大学 ]
(2017/1/15 03:00)
スマートフォンからノートパソコン、電気自動車、ロボット、ドローン、家庭用蓄電池などに幅広く使われるリチウムイオンバッテリーは、もはや日常生活になくてはならない存在。ただ、エネルギー密度が高い半面、可燃性の高いのが弱点で、ショートなどで異常過熱すると発火したり破裂したりする恐れがある。そうした中、リチウムイオンバッテリーが過熱しても発火せず、安全性の向上につながる技術が米スタンフォード大学の研究チームよって開発された。
スタンフォード大材料科学・工学部のカイ・リウ(Kai Liu)博士らがまず着目したのは、よく知られた難燃剤のリン酸トリフェニル(TPP)。それをバッテリーの両極間で電流を流す有機溶剤の電解質に加えておくと、発火した場合に素早く火を消すことができた。だが、TPPは電解質の電気伝導性を低下させるため、電池としての出力が弱まってしまう問題があった。
そこで、研究チームはTPPをポリマー繊維の「鞘」でカプセル化し、通常はTPPと電解質が触れないよう分離しておくことを思いつく。こうした発想のもと、TPPを中心部分に入れ、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)で周囲を覆ったマイクロメートル単位の太さの微細ポリマーを、高電圧をかけながら細いノズルから高分子溶液を連続的に押し出すエレクトロスピニング法で作製した。
このポリマー繊維を正極と負極を絶縁するセパレーターに組み込んでおくと、バッテリーはそれまでと同じように機能した。一方で、いったんバッテリーが異常過熱し、温度が150度Cを超えるとポリマーが溶けて内部のTPPがセパレーターから電解質中に放出される。それにより、発火した場合でも、TPP放出後わずか0.4秒で完全に消火することを実験で確認した。研究成果は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに1月13日に掲載された。
(2017/1/15 03:00)