[ 化学・金属・繊維 ]

ニュース拡大鏡/JFE、極厚鋼板の溶接技術をJMUと共同開発

(2017/1/23 05:00)

  • JFEと共同開発した溶接技術で大型コンテナを建造するJMU呉事業所

JFEスチールがジャパンマリンユナイテッド(JMU、東京都港区)と共同で、大型コンテナ船に使う極厚鋼板の特殊な溶接技術を開発した。JMUで現在、15隻連続建造中のコンテナ船へも適用し、溶接効率の改善や船体の安全性向上に貢献している。JFEは数年先に船体の大型化が一層進むことを想定し、次世代大型船向け溶接技術と世界最大の厚板も開発し、将来に備えている。(編集委員・大橋修)

【アレスト性能】

コンテナ船はなるべく多くのコンテナを積めるよう上面デッキに巨大な開口部を持つ。その分、航行中の波の衝撃でデッキや側面のハッチコーミングに荷重がかかるため、その部分には極厚で高強度の鋼板を使う。

だが、鋼板は極厚になるほど、また高強度になるほど脆くなるため、万が一、鋼板に亀裂が入っても途中でその波及を止める「アレスト性能」が求められる。国際船級協会連合でも一定以上のアレスト性能を義務付けている。

そこで着目したのが厚板同士を接合する溶接部分。板をT字形に接合する際に用いる隅肉溶接において、板同士は接触させず、その間にわずかな隙間をつくることにした。結果、亀裂がその隙間によって波及せず、溶接箇所でストップすることが確認できた。

【作業時間を短縮】

他方、極厚になるほど溶接する面積も大きくなり、溶接工の作業負荷も高まっている。例えば、鋼板同士を横につなぐ突き合わせ溶接では、溶接材が溶け込みやすいよう、斜めにカットしたV字形の溝の「開先」が広くなる。これに対し、JFE独自のアーク溶接で条件を最適化したことにより、開先を狭くし、その断面積を約3分の2に削減することに成功した。溶接時間も3分の2に減るため、極厚の板でも従来と同じ工数で溶接できるようになった。

さらに、JFEは溶接材を溶かし込むノズルに専用の先端曲がりチップを採用し、断面積を約3分の1まで削減できる「超狭開削アーク溶接技術」を開発した。長さ約100ミリメートル、太さ約5ミリメートルのチップを最適に動かすことで、より狭い開先でも溶接材を的確に溶け込めるようにした。「チップの形状や運動の方法など溶接方法そのものを変えた。3分の1は世界初」(池田倫正スチール研究所接合・強度研究部長)と胸を張る。

【オファー待つ】

JFEは鋼板そのものでも厚さ100ミリメートルという世界最大のアレスト鋼を開発した。これまでは最大85ミリメートル厚。「コンテナ船も現在の1万4000個積みから2万個積みの時代になるかもしれない。そのときのために開発した」(長谷和邦スチール研究所鋼材研究部長)とし、造船会社からのオファーを心待ちにしている。

(2017/1/23 05:00)

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