[ 金融・商況 ]
(2017/1/26 17:00)
25日のニューヨーク株式市場で、代表的な株価指数のダウ工業株30種平均が史上初めて2万ドルの大台を突破した。トランプ米大統領が掲げる景気刺激策に期待し、株価が急上昇した「トランプ相場」は年明け以降に失速気味だったが、新政権の本格稼働で再加速した。だが、保護主義的な通商政策を推し進める「米国第一」の姿勢が鮮明になり、期待先行の相場展開には危うさも潜む。
マネー「大転換」
「トランプ政権下でも米国経済はうまくいく」。大統領選でヒラリー・クリントン氏支持を公言していた米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は相場の先行きに楽観的だ。「物言う株主」のカール・アイカーン氏は、トランプ氏の予想外の選挙勝利で一時パニック的な株安となった際、約10億ドル(約1130億円)を投資。「もっと買うべきだった」と悔やんでみせた。
2008年の金融危機を受け、市場ではリスクの低い債券への投資が主流になった。しかし、トランプ氏が掲げる巨額インフラ投資や大型減税、規制緩和に期待し相場が沸く中、投資マネーがリスクの高い株式に移る「大転換(グレートローテーション)」が始まったとの見方が広がっている。
相場をけん引する「トランプ銘柄」の代表格は金融株だ。トランプ相場が始まった昨年11月以降、ゴールドマン・サックスの値上がり幅は3割、JPモルガン・チェースが2割超と目覚ましい。厳しい金融規制の緩和、景気のさらなる拡大で、収益機会が増えるとの思惑が背景だ。JPモルガンのダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)は「強い経済は金融機関に恩恵だ」と歓迎する。
「期待外れ」に警鐘
ただ、トランプ氏のインフラ投資や減税策には依然、実現性に疑問が残る部分も多い。ダウが年明けから2万ドルを目前に足踏みを続けたのは、そのためだ。米エコノミストは「今後の政策運営が期待外れになれば、相場は一気に崩れかねない」と指摘。日本を含め、世界の金融市場が波乱に巻き込まれるとの警戒感は根強い。
大統領権限の大きい通商政策では、環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱など「米国第一」が明確だ。メキシコなどからの輸入に課税する「国境税」構想も、市場を開放し世界から投資マネーを集め、成長を謳歌(おうか)してきたこれまでの米国の方針に逆行する。米著名債券投資家のビル・グロス氏は「反グローバリズム的なトランプ政権の負の側面に目を向けるべきだ」と強く警鐘を鳴らしている。
(ニューヨーク時事)
(2017/1/26 17:00)