[ オピニオン ]
(2017/2/7 05:00)
ライフサイエンス関連の産学官連携は全国で盛んだが、地方から有望事業が出てくることはまれだ。山口発の新たな取り組みに学びたい。
山口県下松市に拠点を置く東洋鋼鈑は、山口大学と10年間以上かけて遺伝子解析時に薬の副作用を予測するDNAチップキットを開発。2014年に薬事申請し、16年末に承認された。17年中の保険収載を見込む。
このキットは、消化器がんや乳がんの抗がん剤「イリノテカン」の副作用予測に利用するもの。山口大によると、イリノテカンの有効率は高いものの投与した患者の75%に副作用が現われてしまう。事前検査によって有効性を判別できれば、副作用リスクを回避できる。
また別の薬剤を選定して医療費を抑制することも可能だ。こうした「プレシジョン・メディシン(精密医療)」は、欧米で新たながん治療の手法として注目されているという。
イリノテカンの利用件数は国内で年2万検体、約4億円の市場規模という。決して大市場ではないが、状況に応じて治療を選定できる個別化医療が実現すれば患者に朗報だ。
東洋鋼鈑は、主力の鋼板事業以外の新たな柱としてライフサイエンス事業を位置づけ、2000年に研究を開始。05年に山口大と、09年には製造販売を請け負うエイアンドティーが参加した共同開発体制を整えた。
この間、山口県は「医療関連産業クラスター構想」を進め、13年度からは「やまぐち産業戦略研究開発等補助金(上限年1億円)」の対象に採択するなど、産学官一丸となって“メイド・イン山口”の医療製品の実現を目指してきた。九州・山口地域でも、これだけ大がかりな連携事業は珍しく、成否が注目されてきた。
今回の製品以外にも、山口大は学内の「先端がん治療開発学講座」を通じて他の疾患の研究を進めている。東洋鋼鈑も新たな製品開発に着手した。山口の取り組みはまだ緒に就いたばかりだが、産学官連携による精密医療の先駆けとして、今後の展開に期待したい。
(2017/2/7 05:00)
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