[ ロボット ]
(2017/2/8 05:00)
電気代節約、製造コスト減
【望遠鏡向け】
アストロエアロスペース(岐阜県関市、藤原洋社長、0575・45・0033)は、大型望遠鏡に使われる非球面の光学素子製造や形状測定技術を得意とする。京都大学で進められていた大型望遠鏡の実用化に向けた技術開発を目的に2005年11月に設立された企業が前身。07年に大型光学素子の製造技術の開発を始めた。
超精密研削技術を生かし、これまでに京大の口径3・8メートル望遠鏡の分割主鏡を製作。国立天文台が米国ハワイ州で運用する「すばる望遠鏡」用のカメラの自由曲面レンズの研削や次世代の超大型望遠鏡「TMT」の分割主鏡の試作も手がけた。
ロボットを導入したのは15年。欧州のストーブリ製で、研磨工具とプローブを切り替えて望遠鏡やレンズなどの大型光学素子の研磨と形状測定の両方に利用している。研磨機と組み合わせたシステムを構築し、最初に手がけたのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測所向け放物面鏡の研磨だった。
【工具制御】
経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、現在取り組んでいる研磨・計測システムの開発でもストーブリ製のロボットを活用。研磨工程では理想形状に近づけるため修正する際に工具を動かすスピードの制御が重要で「数十万点に及ぶ位置や速度の指令でロボットの動作を制御する必要がある」(所仁志氏)。ストーブリ製であればこうした制御をロボット単体で実現できると知り導入を決めた。
導入にあたっては自社の使用方法に特化したロボットのトレーニングや、位置や速度など記述した情報通りにロボットを動作させるアプリケーションの開発、形状測定システムとロボットの同期方法の提案を要請した。
ロボット導入前は研削加工機1台で精密研削と研磨を行い、製造する光学素子の焦点距離に相当する高い位置に干渉計を置いて形状測定をしていた。ロボットを利用した計測方法は大がかりなシステムが不要で、ロボットが研磨工程を担う。研削は研削加工機だけで済むため、複数の工程を同時並行できる。ロボットを使うことで研削加工機に比べて電気代もかからず、製造コストが削減可能になる。
【用途拡大】
ロボットの性能に加え、「初期不良の際、技術者の対応が非常に早かった。要望以上の提案も返してくれる」(所氏)とストーブリの顧客応対の姿勢にも信頼を寄せる。
今後は洗浄を含む一連の工程の自動化にロボットの適用を目指すほか「材料メーカーから納入されたガラス平面基板の荒研削にもロボットが使えれば」(同)と一層の活用を模索する。
(大阪・窪田美沙)
(随時掲載)
(2017/2/8 05:00)