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[ エレクトロニクス ]
(2017/3/13 05:00)
東芝が、半導体メモリー事業を分社して設立する新会社の株式の完全売却に踏み込む可能性が高まってきた。新会社の評価額が期待より上がらない懸念がある一方で、米原子力発電事業子会社ウエスチングハウス(WH)の破産処理コストを捻出するという新たな役割への重みが増しているからだ。(後藤信之)
【新会社の価値】
東芝が4月1日付けで運営を始めるメモリー新会社「東芝メモリ」。その価値はいくらなのか。市場関係者の間では「2兆円は下らない」との指摘が多い。米ウエスタンデジタル(WD)が、2兆円規模を投じてメモリー大手の米サンディスクを買収したことが根拠の一つだ。
「2兆円の値が付いたらとんでもなくラッキー」。一方、東芝幹部は慎重にそろばんをはじく。メモリー新会社の株式を売却するための入札には、複数のファンドが興味を示している。ファンドは新会社を上場させてキャピタルゲイン(資産売却益)を得る考えで、東芝幹部は「利ざやを大きくするため入札時にはディスカウントしてくるだろう」と話す。こうしたことから業界関係者は新会社の価値は「1兆5000億円という線が妥当ではないか」とみる。
【7000億円損失】
同社は米原発事業を中心に7000億円規模の損失を計上し、2017年3月期に債務超過に陥る公算が大きい。メモリー新会社の売却は、財務基盤強化を一番の狙いとしてきた。3月に入りそこに、米原発事業のリストラ費用捻出という目的が加わってきた。
巨額損失の元凶となったWHをめぐっては、米国や中国の原発新設プロジェクトにまだ不透明感が漂っている。そこで東芝は追加損失リスクを断ち切るため、WHについて米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する検討作業に着手した。先週末には麻生太郎財務・金融相が「破産法11条(の適用申請)が31日までに決まらないと、東芝も決算を出しにくい」と発言。取引銀行の間でも活用を推す声があり、急速に適用申請が現実味を帯びてきた。
ただ東芝はWHに対し約8000億円の債務保証をしている。このため工事遅延などによって生じた損失の補填を電力会社から求められた場合、WHが破産法11条適用となっても、東芝が肩代わりする必要がある。
【資金調達】
東芝はメモリー新会社の株式を売却し、1兆円規模の資金調達を目指す計画。入札では100%売却を前提条件としているが、株式の保有を継続し一定の関与を残す方針も否定していない。しかしWHの破産法11条適用や、債務保証リスクを考慮すれば、資金は多いほうが良い。東芝の社外取締役は「WHを破産処理して泥沼から抜け出さないといけない。そのためメモリー新会社を完全売却し、最悪に備えるべきだ」と強調する。
メモリー新会社をめぐっては、東芝の関与継続を望む声が社内外で少なくない。半導体装置メーカー幹部は「東芝の関与がなくなり、外資系になると人材流出が加速するのではないか」と懸念を示す。
入札に応募する日本企業は今のところ見当たらない。東芝から完全にメモリーがなくなり、半導体メモリーを手がける日本企業が消滅する事態が迫っている。
(2017/3/13 05:00)
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