[ オピニオン ]
(2017/3/28 05:00)
大学の無料オンライン講座を、企業が研修に活用する動きが出てきた。新たな“学び”が社会人に浸透するかどうか注目される。
大学が学生向け講座の一部を圧縮し、インターネットで無料公開する大規模公開オンライン講座(MOOC=ムーク)が欧米で拡大している。登録者がオンラインで受講し、課題を提出して修了証を得る形が多い。
日本で中心となっているのは日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC=ジェイムーク)だ。2013年にスタートし、現在約33万人が登録している。
社会人が教養を身につける目的で自主的に受講するケースが多いものの、当初の期待に比べると伸び悩んでいた。しかし最近になって、企業による組織的利用の可能性が浮上している。
JMOOCは、若手技術者の“学び直し”に向けた『理工系基礎科目シリーズ』を新設。「電気回路」「流体力学」など電気・機械系を皮切りに12科目を設定した。これを複数の大手メーカーが2017年度から研修に導入する。動画も含めた講座を若手社員に自宅で事前学習させ、研修では実習に重点を置く方法を想定している。
近年、大学の学部学科が多様化する一方、少子化と進学率増によって学生の基礎的学力のばらつきが大きくなっている。このため「機械工学科卒ならこの程度の知識がある」といった常識が通用しない。少なくない数の企業が、新入社員に再教育を実施している。こうした企業にJMOOCはうってつけだ。
研修に人手をかけられない中小企業にとっても、MOOC方式の人材育成は魅力がある。東京都品川区は、区内の企業に受講を促すことを検討中。また長岡技術科学大学はアジアからの留学生にこのプログラムを活用し、来日前に学部教育の一部を受講させる試みを始める。
インターネットを使った教育は多種多様だが、どれも期待ほど普及していない印象がある。企業にとって魅力的な教材を開発し、新たな人材育成のツールとなることを期待する。
(2017/3/28 05:00)
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