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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/29 05:00)
東京電力は福島第一原子力発電所1号機の地下階調査を終えた。投入した調査ロボットは予定の作業をほぼ完璧にこなして帰還したが、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の分布状況は分からなかった。東電は計測したデータを解析するが、デブリの状況を推定するのには1―2カ月かかる見通しだ。国と東電は今夏にはデブリの取り出し方針を決める。方針は取り出し方法を絞り込まず、幅を持たせた内容になりそうだ。
(小寺貴之)
■ロボは予定作業こなす
【10カ所計測】
1号機では3月18日から22日の5日間、内部調査が進められた。ロボットは日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)製で、格納容器内部1階からワカサギ釣りのようにカメラセンサーを地下階に垂らしてデブリを撮影する。
幅30ミリメートルの格子状床(グレーチング)の隙間に幅25ミリメートルのカメラを通し、地下階の配管や構造物の間を縫って床に広がるデブリの計測を目指した。途中で構造物にカメラのケーブルが絡まれば、動けなくなるため、緊張の解けない作業だった。
5カ所の調査予定点に対し、5日間で10カ所の計測に成功した。だが床の上には高さ90センチメートル程度の堆積物が降り積もっており、デブリの直接観測はかなわなかった。線量の空間分布は測定できたが、堆積物の内部構造や放射線遮蔽(しゃへい)率が分からず、堆積物の下にデブリがあったとしても、その量の推計は極めて難しい。
東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは「細かなデータを含めて解析し、状況を見極めたい」と今後の解析に託した。
【堆積物がネック】
解析を難しくしているのは堆積物の原因がわからない点だ。配管を覆うアルミ製保温材や鉛製の遮蔽材の溶融物が候補に挙がるが、厚み90センチメートルの体積や量を説明するには足りない。堆積物中に溶けた鉛が広がっていれば遮蔽材として働く。一方、堆積物表面は砂や小石のようなもので覆われ、表面は線源になっていた。線源と遮蔽材、両方の効果がその下の燃料デブリの分布推計を困難にしている。
■国と東電、取り出し方法を今夏には決定
最大の焦点だった、デブリが格納容器の壁面に達する「シェルアタック」は、壁面付近の床面を計測できなかったため、判断材料を得られなかった。東電原子力・立地本部の岡村祐一本部長代理は、「シェルアタックの判断は現状では難しい」と説明する。
【装置を大型化】
(2017/3/29 05:00)