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[ エレクトロニクス ]
(2017/3/31 05:00)
レノボ(中国)の新しい低温ハンダ付け技術が、注目を集めている。開発の中心を担ったのは、大和研究所(横浜市西区)だ。ハンダ付けの最高温度を従来より70度C引き下げることで、使用エネルギー量を大幅に減らし、製品不良も削減する。この技術を独占的に使えば他社に対し優位に立てるにもかかわらず、同社は2018年内に技術の無料提供を始める。プリント基板技術を統括する小菅正SESM,シンクECAT技術部長らに話を聞いた。(梶原洵子)
「協力相手の千住金属工業などハンダメーカーに、電機大手などから多くの問い合わせが来ている」と、小菅部長は反響の大きさを語る。低温ハンダ付け技術において、ハンダ付けに使うオーブンの最高温度は180度C。従来の鉛フリーハンダに比べ、ハンダ付け工程で排出される二酸化炭素(CO2)を35%削減する。ハンダ付けはパソコン生産の中で最もエネルギーを使うため、コスト削減効果は大きい。
00年代に環境規制によって鉛入りのハンダが使えなくなって以来、多くのメーカーが低温で溶けるハンダの実用化を目指した。高温のオーブンを通すとコストの問題が生じるほか、製品に不具合が出やすくなる。最近では基板が平均10層まで高密度化し、より熱に弱くなり、深刻さが増している。
新しいハンダ技術では、従来の鉛フリーハンダに比べ、基板の反りを50%減らす。製品不良は同90%減る計算になるという。鉛フリーハンダを使った場合の一般的な不良率は約0・1%のため、これが0に近づく。
技術の核となるハンダペーストは、スズとビスマスをベースにさまざまな金属の配合比率を試した。ただ、ビスマスは硬くて脆(もろ)く、偏って固まるなど扱いにくい素材。「オーブン内の温度変化など複数の条件を組み合わせてブレークスルーできた」(小菅部長)。
ここに、技術を無料提供する理由がある。18年には材料メーカーとの間の優先契約が解けて、レノボ以外もペーストを購入できる。だが、温度管理も含めて正しく使えなければ、不良が発生してしまう。消費者の間で技術への不信感が広まることが恐ろしかった。
まず、大和研究所を中心に開発する主力パソコン「シンクパッド」のEシリーズや第5世代のX1カーボンに同技術を採用した。18年末までにレノボ製パソコンの実装基板を生産する全てのラインに同技術を導入し、18年以降にはスマートフォンやサーバーへの適用も検討する。一気呵成に導入することからも、技術への自信がうかがえる。
プリント基板を含むサブシステム開発を統括する福島晃エグゼクティブディレクターは「幹部らも無料提供に反対しなかった」という。プリント基板はパソコンやスマートフォン、サーバーなど、あらゆる電気製品に搭載される。電機業界全体での環境への貢献は非常に大きくなりそうだ。
(2017/3/31 05:00)
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