[ その他 ]
(2017/4/11 05:00)
《優秀賞》
■アドイン研究所／森林３次元計測システム「ＯＷＬ」
赤外線レーザースキャナーで樹木の本数や位置、胸高直径、材積（木材の体積）などを計測し、その場で３次元立木マップを確認できる。総重量３・７キログラムと軽量で、一脚式のため傾斜面でも片手で支えられる。レーザーは計測者の目に当たっても安全なクラス１を採用した。自己位置と地図の同時作成技術「ＳＬＡＭ」を応用し、基準マーカーを不要にした。任意の地点を決めて約１０メートルごとに測定する。スキャン時間は１地点４５秒間で、操作はボタンを押すのみ。４００平方メートルの範囲の場合、約１５分間で測定が終了し、数分後に３次元化する。精度は手計測に比べて胸高直径で誤差２センチメートル以内、平均樹高は誤差１メートル程度を実現した。価格は４２３万円（税別）。（東京都千代田区）
■ＭＳＴコーポレーション／ワークホルダシステム スマートグリップ
５軸マシニングセンター向け加工対象物（ワーク）治具システムで、複雑形状の加工が可能という利点を損なわずに、加工能率の向上と自動化を図れる。テーブルに固定されるヘッド、脱着部（インターフェース）とワークの固定部が一体構造のワークホルダで構成。ヘッドとワークホルダのインターフェースは国際標準規格「ＨＳＫ」を採用した。ワークの１面をダブテール（アリ溝）加工し、この小さな加工部分を２面拘束方式により、強力かつ高剛性につかむことで、さまざまな方向から加工しやすいコンパクトな形状でありながら高能率加工できる。ワークをつかんだワークホルダごとロボットでスムーズに自動交換できるため、自動化を図れる。（奈良県生駒市）
■ＭＣＢＩ／認知症を早期発見する「ＭＣＩスクリーニング検査」
アルツハイマー型認知症の前段階である軽度認知障害（ＭＣＩ）のリスクを早期に発見できる。検査は７ミリリットルを採血するのみ。脳神経細胞を破壊するアミロイドβペプチドを排除する機能を有する（１）アポリポたんぱく質（２）トランスサイレチン（３）補体第３成分―の３種のたんぱく質の血液中の量を測定する。専門医が臨床診断した検体の測定結果を統計解析して作成した独自の判別式に測定値を代入し、リスクを算出する。認知機能低下の程度をＡ―Ｄの４段階で判定し、約２週間後に結果を通知する。健常高齢者との判別精度は約８０％としている。筑波大学などの研究成果を生かして事業化した。契約医療機関１５００件超で、約９２００人の検査実績がある。（茨城県つくば市）
■西部技研／ヒートポンプ（ＨＰ）排熱利用 省エネ型低露点除湿機
６５度Ｃ前後の低温再生で、マイナス６０度ＣＤＰ（ＤＰは露点温度）以下の低露点の乾燥空気環境をつくれる。特許技術である２段除湿フローを採用し、除湿機のインタークーラーの排熱を除湿ローターの再生空気の熱源として利用できるようにした。ヒートポンプの排熱を利用するための冷凍機の冷媒回路・制御技術も確立した。現行機は１４５度Ｃ以上の再生温度が必要だったが、これに比べて省エネ性を４０％以上向上した。低温再生のため、電気ヒーターなどによる火災の危険性も低い。リチウムイオン電池の製造ラインで採用を提案する。同社試算によると、製造コストを約８％削減できるとしている。システム価格は規模・仕様により２０００万円から。（福岡県古賀市）
■帝国インキ製造／高精彩スクリーンインキ
スクリーンインキでは難しかった「微小面積印刷」と「広域面積印刷」の双方を実現した。従来、１００マイクロメートル程度（マイクロは１００万分の１）の細線パターンを印刷した場合、粘度や流動性に起因するにじみが発生し、１５０マイクロメートル程度までダレが広がっていた。これに対し、流動性を高粘弾性・高チキソの設計とし、にじみの発生を抑えることに成功した。熟練者の技術を必要とせずに安定して精度１００マイクロ―１１６マイクロメートルで印刷できる。印刷品質はインクジェットやオフセットに匹敵し、精密なデザイン画像などを忠実に再現できる。１キログラム単位での販売を基本とし、定価は従来製品と同等の３０００円からに抑えた。４シリーズ４５色を提供している。（東京都荒川区）
■日冷工業／小型高性能の旋回流式気液分離器
エアコンや冷凍・冷蔵車などに使われる旋回流式の気液分離器。二相流入口管の端面形状を片側だけつぶした形状とし、端部外側をテーパ加工して容器内壁に近接・接触させるユニークなレイアウトを採用した。流量に応じた流路断面積（空間）を確保し、冷凍サイクルの性能を低下させる要因となる圧力損失を軽減した。これらにより、容器の小径化、小型化、軽量化を実現した。従来品は流量が減少すると遠心力が小さくなり、気液分離機能が半減したが、これも解消した。また構成部品がシンプルで、価格も抑えられる。東京大学の鹿園直毅教授に旋回する流体の挙動、特性などについて助言を受け、パイプ加工などの高精度成形技術を生かして製品化にこぎ着けた。（栃木県栃木市）
■フェニックスソリューション／金属の裏側でも読み取り可能なＲＦＩＤ
金属タグは従来、金属製品の裏面に貼り付けると電波干渉で読み取れない。またタグを大量に積層すると読み取れないといった課題があった。タグと金属製品の接触部分をアンテナのグランド（アース）として作用させて電波を放射する構造とし、これらの課題を解消した。読み取り装置から電波を放射すると、金属製品が受けた電波がアンテナに導かれてタグのＩＣチップが起動し、コマンド（命令）を解釈して識別情報を返信する。例えば台車に載せられた２００脚のパイプいすの場合、数秒で一括して読み取れる。読み取り距離は表面側から１０メートル、裏面側から５メートル。動作温度範囲はマイナス２０度―６０度Ｃ。金属資材の入出荷管理などを効率化し、コスト削減を図れる。（金沢市）
■丸三電機／幅広カシメ式ヒートシンク
ヒートシンクはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属を加工して製造される放熱・排熱部品の総称。幅広カシメ式は押出成形した幅９ミリメートルのブロック状ヒートシンクに圧力をかけて積層する方法で、最大幅７９５ミリメートルまで大型化できる。カシメ部分の突起を垂直方向ではなく、斜めに加工したのが特徴。これにより、圧力を解放した瞬間に部材が元に戻ろうと反発するスプリングバックの力を、カシメ部分が圧着する力へと変換する。従来方法では幅４００ミリメートル超が難しかった。また放熱面が内側のため、両面に熱源（半導体素子）を設置できる。電子機器をコンパクト化し、強制空冷のファンも減らせる。パワーデバイスなどでの採用を見込む。（東京都千代田区）
■ユニソク／低温分光ナノ構造顕微鏡
原子や分子一つひとつの形状を見分けられる走査型プローブ顕微鏡（ＳＰＭ）と、分子内や結晶の元素結合を同定するラマン分光法を組み合わせた。ＳＰＭの深針に光をあて、深針直下で増強されるラマン散光を検出する。真空・極低温での測定に特化した光学システムを搭載した探針増強ラマン散乱（ＴＥＲＳ）装置を開発した。大気中の水分などによるゆらぎの影響がなく、高い再現性と空間分解能でラマン分光できる。現状では単分子レベルの空間分解能を達成した。ナノスケール（ナノは１０億分の１）での観察が求められる創薬開発、二次元電子デバイス材料の開発などでの利用を見込む。ＳＰＭとＴＥＲＳ装置のシステム価格は約８０００万円から。（大阪府枚方市）
■湯山製作所／散薬調剤ロボット「ＤｉｍｅＲｏ（ディメロ）」
粉薬（散薬）の調剤から分包までを全自動化した。患者名、薬品名、服用量などの処方データに従って指定の散薬容器を棚から取り出し、天秤（てんびん）と一体化した振動機構に電磁石で設置して散薬容器ごと振動させる。振動制御により、散薬容器から回転するドーナツ状の円盤にこぼれ落ちる量（流量）を制御し、分割機構に均等に配分して１回服用量ごとに包装する。散薬容器は筒状で、最大３０本収納できる。ＲＦＩＤ（無線識別）タグで散薬容器の位置や薬品残量などを把握。散薬容器は収納前に容器先端から吸引清掃する。薬剤の取り違えを防止し、分包作業時間の短縮、負担軽減を図れる。全国の調剤薬局・病院に計２１０台以上の納入実績がある。（大阪府豊中市）
(2017/4/11 05:00)
