[ トピックス ]
(2017/4/14 05:00)
米ニューヨークで12日開幕した「ニューヨーク国際自動車ショー」ではスポーツ多目的車(SUV)のコンセプトカーの発表が相次いだ。米市場ではガソリン安を追い風にSUVを含む「小型トラック」セグメントに人気が集中している。各社は特徴あるSUVを披露し、需要の取り込みを狙う。一方、米新車販売の減速が鮮明になっており、市場の先行きには不透明感も漂う。(ニューヨーク=下氏香菜子)
トヨタ・スバル、大型・若者向け訴求
【顧客層絞る】
SUBARU(スバル)は2018年に投入予定の北米専用大型SUV「ASCENT(アセント)」のコンセプトモデルを公開。3列シートを搭載した7人乗りの大型SUVで、スバル車で最大の車種になる。全面刷新した新車台「スバルグローバルプラットフォーム」や水平対向直噴ターボエンジンなどを採用。3列シートを搭載したDセグメントの大型SUVは「子育て世代を中心に市場が拡大傾向にある」(中村知美スバル・オブ・アメリカ会長)。主戦場の米国にアセントを投入し、新たな顧客層獲得を狙う。米国工場で生産し、月販5000台を想定する。
トヨタ自動車は「ミレニアル世代」と呼ばれる30代半ばまでの若者に照準を合わせた小型SUVのコンセプト車「FT―4X」を初公開した。トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)の車台採用や4WD搭載のほか、内装に取り外し可能なオーディオシステム、飲料用ボトルに使えるドアハンドルなどアウトドアで役立つユニークな装備を搭載した。都市部に住む若者がいつでもアウトドアを楽しめる車の価値を提案する。
日系勢のほかにも、米フォード・モーターの高級車部門である米リンカーンが大型SUVの次期型を発表するなど各社のブースにはSUVがずらりと並び、米国におけるSUVの人気ぶりを示した。ガソリン安の追い風に加えて「世界的にフォーマルなものからカジュアルなものを好む人が増えている」(吉永泰之スバル社長)との指摘もあり、SUV人気は当面続いていくとみられる。
ホンダはエコカー積極投入
【同じ車台採用】
ホンダは最新のエコカーをアピール。プラグインハイブリッド(PHV)「クラリティプラグインハイブリッド」と電気自動車(EV)「クラリティエレクトリック」を世界初公開した。燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」と同じ車台を採用。
17年内に米国で発売する予定で、シリーズ全体で4年間で7万5000台の販売を見込む。
PHV、EV、FCVが同じ車台を採用するのは世界初。PHVはガソリンと電気の総走行可能距離が約531キロメートル、EVの走行可能距離は約128キロメートル以上にした。PHV、EVともに販売価格は3万ドル(約327万円)台を想定する。
ホンダは30年に世界販売の3分の2をPHVなどの電動車両に置き換える計画を掲げている。米トランプ政権が環境規制を緩和する方針を示しているが、「環境対応へのトレンドは大きくは変わらない」(新崎知プロジェクトマネージャー)と指摘。SUVなど他の主力車とともに、環境車の投入を積極化する。
減速目立つ米自動車市場−新車販売、乗用車の下落顕著
【潮目変わる】
各社が最新のSUVやエコカーを華々しくアピールしたニューヨーク国際自動車ショー。米国市場は各国自動車メーカーが競う主戦場だ。ただ、17年に入り、これまで好調を持続してきた米新車販売の減速が鮮明になり、事業環境の潮目が変わりつつある。
米調査会社オートデータによると、米国の3月の新車販売台数は前年同月比1・6%減の155万5859台と3カ月連続で前年同月を下回った。車種別では、乗用車が同10・6%減の61万1999台、小型トラックが同5・2%増の94万3860台。SUVを含む小型トラックが好調だったが、乗用車の落ち込みが響いた。
こうした中、乗用車の販売をテコ入れするため、各自動車メーカーがディーラーによる車の値引きの原資として支給する「販売奨励金」を積み増し、販売競争が激化。中古市場には大量のリースアップ車両が流れ込み、新車の再販価値が低下し、ユーザーの買い替えを阻害するリスクも懸念されている。
【変化を注視】
また、米連邦準備銀行(FRB)が主導する米国の金利引き上げは、低金利の恩恵を受けていた新車販売に影を落とす可能性がある。「米車市場は今年から頭打ちか横ばいになるだろう。17年は特に市場を良くウオッチしてきたい」(中村スバル・オブ・アメリカ会長)。
米トランプ政権の通商政策も依然として判然としない。自動車メーカー各社は市場動向に左右されない商品力のある製品を投入するのはもちろん、米国市場の変化を注視しながら、慎重なかじ取りがより求められそうだ。
(2017/4/14 05:00)