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[ エレクトロニクス ]
(2017/4/28 05:00)
「ウエスタンデジタル(WD)が、『NO』と言い続けていたら動かない」―。東芝幹部は漏らす。東芝が分社して設立した「東芝メモリ」への事業移転が滞っていることは、東芝メモリの売却に向けWDの意向を無視できない状況を浮き彫りにしている。今後、WDと日米の投資ファンドが軸となり入札が進みそうだ。一方、日本の事業会社も出資の機会をうかがっており、動向が注目される。(後藤信之)
東芝はWDとの合弁会社「フラッシュフォワード合同会社」の持ち分を東芝メモリに移転できずにいる。WDとの協議が続いているためだ。
「一般的に合弁会社の持ち分を、子会社に譲渡するのは問題とされない」(企業法務に詳しい安國忠彦弁護士)という。それでもWDが合意を留保しているとすれば、「第三者への東芝メモリ売却反対という強い意志の表れ」(業界関係者)ともとれる。
17年度中の売却という時間的制約もある中、東芝が入札を前に進めるためには、WDに有利な条件をある程度飲まざるを得ない状況だ。
東芝メモリの入札ではWDのほか、米ブロードコムや台湾・鴻海精密工業、韓国SKハイニックスが候補として残っている。一時は技術流出や安全保障上の懸念のないブロードコムが有力視されたが、WDは同社を名指しで批判しており、「ブロードコムという選択肢はゼロに近い」(東芝幹部)と話す。
WDの弱点は資金力。このため「WDは東芝との提携関係の維持を認めることを条件に、入札のパートナーを募るのではないか」(ファンド関係者)との指摘が上がる。実際にWD幹部は産業革新機構や日本政策投資銀行に連携を呼びかけた。
ただ東芝メモリの価値は2兆円とされ、買収資金をどう確保するかは課題として残る。そこで資金力のある米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)がWD“連合”に合流する動きが出ている。KKRは日本での投資実績が豊富で「人間関係の面でも信頼感がある」(同)と評価する。
メモリー技術はビッグデータ(大量データ)やAI(人工知能)ビジネスの高度化のカギを握る。竹内健中央大学教授は「半導体の裾野産業や学術分野への波及効果が大きい。日本に残すべきだ」と話す。その観点では東芝メモリへの日本企業の出資が望まれる。
富士通などは出資に前向きとされる。2次入札締め切りは5月19日。残された時間の中で、“日本連合”形成に向けたうねりは大きくなるのか。
(2017/4/28 05:00)
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