[ トピックス ]
(2017/5/15 05:00)
精度向上や作業効率化に貢献
切断機・ベンダー(曲げ加工機)・端末加工機は、パイプや板材、棒材を「切る」「曲げる」「絞る」といった2次、3次加工に用いられる。自動車をはじめ、電機、造船、半導体、建築など、さまざまな産業分野の部品・資材の生産に不可欠な存在で、メーカー各社は加工の高精度化や作業の効率化に加え、材料の歩留まりの改善などにも取り組んでいる。高度化するユーザーニーズに対応した製品開発と、そうした製品の提供を通じてモノづくりの現場を支え続けている。
モノづくり現場 支え続ける
【幅広い用途】
金属や樹脂の切断には、刃物やプラズマ・アーク切断、レーザーやウオータージェット、プレスによるせん断など、さまざまな手法がある。レーザーは熱影響が少なく、薄鋼板の精密切断などに向いている。また、ウオータージェットは高圧に加圧された水で切断する。これは熱による材質への影響がなく、粉じんの発生もない。コンクリート構造物の切断や解体、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の加工など、用途は幅広い。
パイプや板材については、丸鋸による機械式切断が主流となっており、木材や金属材料などからの部品・製品の切り出しや、次工程のために材料を一定の長さにそろえる作業を担っている。
その丸鋸切断機では高精度化や高効率化にとどまらず、これまで加工が困難だった材料や形状への対応も加速している。あるメーカーでは角度60度までの斜め切断が高精度に行える丸鋸切断機を開発。鋸刃を固定したテーブルが旋回し左右それぞれ60度まで設定できる。従来の直角切断に加え、斜め切断対応機の投入により、新たな需要の掘り起こしを目指している。
さらに別のメーカーでは、従来より刃数を大幅に増やした丸鋸を開発。これにより、超高張力鋼板(超ハイテン)でも特に薄い0.6ミリメートルの薄肉パイプを高精度・短時間に切断できる機械を製品化した。こうした薄肉パイプは変形しやすく、切断が難しい。この切断の効率化は刃数だけでなく刃厚も工夫することで実現した。自動車用マフラーなどの加工で威力を発揮すると見込まれている。
このほか、刃の薄肉化による環境負荷低減への対応も進む。高速度鋼(ハイス)などを採用して鋸刃を薄くすると、加工対象物(ワーク)との摩擦抵抗が減るため、切断速度を上げられる。厚さが減る分、切りくずの発生が抑えられ、材料の歩留まり改善も図れる。切断時の負荷も減るので消費電力の削減にもつながるというわけだ。
【製造工程で採用】
ベンダーはパイプや棒、線材、板材などの金属素材に連続的に圧力をかけ、狙った形状に加工する。自動車のウオーターパイプや、吸気用のパイプ、マフラー、シートフレームなどの製造工程で採用され、活躍している。
この分野では省力化や自動化が進展している。コンピューター数値制御(CNC)タイプが普及しており、加工精度向上や作業の効率化に貢献している。ロボットアームを搭載して複雑な曲げ加工を1台でこなす機械もある。素材供給から切断、穴開け、曲げ、絞りといった工程を担う機械をつないでライン化し効率アップを図る提案も盛んに行われている。
こうした省力化・自動化は今後、少子化などの影響による若手技術者の確保難が予想されるなか、均質な製品を生産していく上で、有効な対策となり得る。このため、ニーズは先行き、一段と高まっていくものとみられる。
【力強さ欠く】
ただ、各種加工機を取り巻く需要環境は力強さを欠いている。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた2016年度(16年4月~17年3月)の工作機械受注実績(確報値)は、前年度比7.8%減の1兆2893億1000万円と、2年連続で前年実績を下回った。うち、内需は同8.2%減の5315億7500万円で4年ぶりに減少。外需は同7.6%減の7577億3500万円で2年連続の減少となった。
内需はほぼ全業種で前年実績を割り込んだ。航空機・造船・輸送用機械、建設機械に加え、各加工機の主要用途先である自動車分野も落ち込んだ。外需はスマートフォン部品加工機の特需の反動減があったほか、北米での設備投資一巡も影響したようだ。
ただ、17年3月単月は前年同月比22.8%増と大きく需要が回復。外需にけん引され、市場には明るさが見えてきている。こうした環境にあるなかで、加工機メーカーは、ユーザーニーズの核心を見極め、これに応える取り組みが一段と重要になる。モノづくりの高度化にいかに迅速・柔軟に対応していけるのか、これらが先行きの業容拡大へのポイントとなりそうだ。
(2017/5/15 05:00)