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(2017/6/1 05:00)
【森林3次元計測システム「OWL(アウル)」】
独自技術 立木位置に着目
“森林”の3次元計測に挑む―。アドイン研究所(東京都千代田区、佐々木浩二社長、03・3288・7311)は、筑波大知能ロボット研究室と森林総合研究所、森林再生システム(東京都千代田区)と共に2010年から5年研究し、ボタンを押すだけの簡単操作で森林を計測し、その場で計測データを見ることが可能な森林3次元計測システム「OWL(アウル)」を開発した。当初、同社にとって森林計測は未知の分野。開発責任者の塩沢恵子取締役事業推進室長は「業界専門用語の知識をつけることも一つの課題だった」と振り返る。
通常、立木情報を得るための林内調査と集計は、手間がかかる。アウルは使用時に装置上部に取り付けた赤外線レーザースキャナーを、下方を除いた270度の範囲で円周上に照射。そのまま水平に180度回転させ、空間をスキャン。樹木の本数や位置、木材の体積、胸高直径など計測し、その場で3次元立木マップを確認できる。
アウルは、1地点当たり約45秒の短時間計測を実現したことで、計算上、400平方メートル範囲の9地点で計測し、次地点への移動時間を30秒とすると約10分少々で計測可能だ。胸高直径で誤差2センチメートル以内、平均樹高は誤差1メートル程度の精度を実現した。立木位置に着目した独自のレーザー点群データ結合技術(特許取得済み)により、空間データを合成させる処理に必要だった基準マーカーの設置も不要。スキャンデータはUSBメモリーに蓄積し、専用ソフトウエア「OWL Manager(アウルマネージャー)」を使っている。
デザインも工夫。1脚式のため測定時の安定性を確保。総重量3・7キログラムと軽量で女性も持ちやすく、使いやすい。筑波大知能ロボット研究室・坪内孝司教授は「装置をより軽く、かつ堅固で、簡便な操作で必要な情報がとれる装置になっていくとよい。森林に限らず、さまざまな環境でのマップが簡便に作れるパッケージに育てる方向もあると考えている」と今後の展望を語る。
(茂木朝日)
(木曜日に掲載)
(2017/6/1 05:00)