[ 中小・ベンチャー ]

広陵発條製作所、特殊仕様バネ承継へ−若手に手巻き技能

(2017/6/19 05:00)

  • バネ製造を受け持つ藤岡さん(右)と松井社長

1個、2個と小分けして梱包(こんぽう)されたバネをトラックが運んでいく。広陵発條製作所(広島市西区、松井優和社長、082・231・7927)は、最小ロット数1個から注文を受ける特殊仕様バネのメーカーだ。職人の高齢化が業界の課題であり、同社も一時は事業存続が懸念されたが、若手の採用で道が開けた。(広島編集委員・清水信彦)

バネが壊れて工場の設備や機械が停止した場合、一刻も早く同じバネを手に入れて再稼働しなければならない。広陵発條製作所はそんな超特急のニーズにも応えてきた。材料のバネ鋼の在庫があれば最短納期はわずか数時間。丸い断面の鋼線だけではなく、四角や台形、楕円(だえん)と言った異形線のバネも作れるのも強みだ。

2014年9月、同社のバネづくりが存続の危機に見舞われた。創業者で父の松井義行前社長が亡くなった。1958年(昭33)に個人で創業し、職人兼経営者としてバネを作り続けてきた。松井優和社長は機械加工事業を担当しており、「わしはようバネは巻かん。得意先からは続けてくれと言われ、どうしようか」と悩んだ。

そんな時に知り合ったのが現在バネ製造を受け持つ藤岡保之さん。関西地区でバネ製造に従事し、今年で13年目となる33歳。15年1月に入社し、先代社長が使い込んだ工場で再びバネ製造を始めた。

旋盤に取り付けた鉄の棒(芯金)に、バネ鋼の鋼線を巻き付けていく。「手巻き」と呼ぶこの方法でバネを作れる職人は高齢化が進み、業界を見わたしても後継者の育成が進んでいない。

松井社長は自社のバネ事業について「人を増やしてまで大きくするつもりはない」と話す。機械設計の段階から標準規格品のバネを使う傾向が強まり、特殊仕様のバネが使われる量は減りつつあるためだ。その一方で、特殊仕様のバネを作れる会社自体も後継者難などで減っていく。生き残った会社に注文が集中することになる。

松井社長は「難しい仕事や新しい注文にどんどん挑んで腕を上げてほしい。難しい注文にも短納期で対応できるようになる」と、藤岡さんへの期待は大きい。会社にとって祖業のバネ。その未来が若い社員に託された。

(2017/6/19 05:00)

中小企業・地域経済のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン