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[ 科学技術・大学 ]
(2017/7/13 05:00)
東北大学大学院医学系研究科の出澤真理教授らは、慢性腎不全のマウスにヒトの多能性幹細胞「ミューズ細胞」を投与し、腎臓の組織を修復することに成功した。静脈投与で障害を受けた腎臓に生着し、5週間後も効果を示した。慢性腎臓病の根本治療につながる可能性がある。日本大学との共同研究。成果は米科学誌ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサエティ・オブ・ネフロロジー電子版に掲載された。
ミューズ細胞は出澤教授らが発見した、骨髄や脂肪などの間葉系組織に存在する多能性幹細胞。腫瘍性がなく、傷害を受けた組織の信号を認知して生着し、組織に適応して分化する特徴がある。
研究チームが免疫機能のない慢性腎臓病のモデルマウス10匹に対し、ヒト由来のミューズ細胞2万個を投与したところ、7週目までに腎臓に生着、分化したことを確認した。
さらに免疫機能が正常な疾患モデルマウスにも同様に投与すると、5週間後までに腎臓に生着し、腎臓の組織に分化し、機能が回復していた。免疫抑制剤を使わずにミューズ細胞は生着しており、異種間移植の可能性を示していた。
腎臓で不要なものを濾過する組織「糸球体」には、毛細血管を構成する「足細胞」が存在する。腎不全などで足細胞が変質すると、修復されない。ところがミューズ細胞を投与すれば、足細胞は修復していた。
年内の治験開始を目指しており、急性心筋梗塞で安全性を主に確認する第一相試験を予定。将来的には、健常なドナーから採取したミューズ細胞を慢性腎臓病患者に点滴投与するなどの治療法が考えられる。
出澤教授は「ミューズ細胞による治療は多くの疾患をターゲットにでき、次世代の修復医療となる可能性がある」と話す。
(2017/7/13 05:00)