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[ エレクトロニクス ]
(2017/8/10 19:00)
監査解決もなお多難、半導体売却は暗礁
東芝は10日、2017年3月期決算の有価証券報告書を関東財務局に提出した。監査を担当するPwCあらた監査法人は、米原発損失の計上で一部に虚偽表示はあるが、それ以外は適正だとして「限定付き適正」の監査意見を表明した。同時に約3カ月遅れで正式発表した17年3月期連結決算は、純損益が国内製造業で過去最大となる9656億円の赤字だった。
東証の上場廃止基準に抵触する恐れがある「不適正」を回避し、東芝がすぐに上場廃止となる可能性は遠のいた。だが、PwCは不正会計の防止などの取り組み状況を評価する「内部統制監査」に「不適正」を表明した。過去の不正会計などを受け、東証が進めている内部管理の審査に影響を与えそうだ。東証は報告書の提出を踏まえ、9月以降に上場廃止の是非を慎重に判断する。
記者会見した綱川智社長は「これで決算は正常化した。株主、投資家に迷惑を掛けないのが基本だ」と述べ、上場維持に向けて最善を尽くす考えを示した。
東芝は16年12月に公表した米原発事業の巨額損失の認識時期をめぐって、PwCと対立。監査承認を得られないことから、17年3月期報告書については、法定の6月末の提出期限を延長し、PwCと協議を続けてきた。
PwCは監査報告書で、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の巨額損失を招いた米原発建設会社の買収に関し、「合理的な見積もりを行っていない」と指摘。「損失は適正な時期に計上されていない。未修正の重要な虚偽表示が存在する」との見解を示した。これに対し、東芝は「入手可能な情報に基づき、その時点で最善の見積もりを行った」と反論した。
10日開示された17年3月期決算は、WHの法的整理など海外原発関連で1兆2982億円の巨額損失を計上。3月末で負債が資産を上回る5529億円の債務超過に陥った。債務超過を解消する資金を得るために売却する半導体子会社「東芝メモリ」について、綱川社長は「可及的速やかに(売却の)最終契約を結べるように最善を尽くす」と語った。
17年4~6月期の純損益は503億円の黒字で、前年同期比36.9%減。売却交渉を進める記憶用半導体フラッシュメモリー事業が好調だった。4~6月期の報告書も「限定付き結論」の監査意見を得た。(時事)
半導体売却へ最善尽くす 東芝社長会見の一問一答
東芝の綱川智社長が10日行った記者会見の主なやりとりは次の通り。
有価証券報告書の提出などにより決算が正常化し、(海外原子力事業のリスク遮断、債務超過解消を含めた)三つの経営課題のうち一つは解決した。連結子会社だったウェスチングハウス(WH)の親会社保証の上限額は確定した。記憶用半導体フラッシュメモリー事業売却による債務超過解消が残っている。産業革新機構などとの合意に至らず、それ以外とも並行して交渉している。
―メモリー事業売却で、日米韓連合と契約に至らない理由は。
取引の詳細になるので控えるが、米ウエスタンデジタルとの訴訟も大きく影響している。
―来年3月までに売却できるか。
可及的速やかに最終契約を結べるように最善を尽くす。
―売却が難航した場合は新規株式公開(IPO)で資金調達するか。
選択肢としてはいろいろあるが、現時点で考えていることはない。
―メモリー事業を売却してまで、なぜ上場維持にこだわるのか。
株主や投資家に迷惑を掛けないのが基本だ。(メモリー事業は)今は好調だが、長く続くかどうかは分からない。
―巨額損失の原因となったWHによる原発建設会社の買収は正しかったか。
総合的に考えて判断は正しかったと考えるが、リスク分析などが足りなかったことは素直に反省する。関係会社のリスク管理は今後もしっかり見ていく。
(2017/8/10 19:00)