[ オピニオン ]
(2017/8/22 05:00)
北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しは米国経済にもマイナスとなりかねない。トランプ政権が「真の国益」に資する通商政策を模索し、保護主義を緩和することを期待したい。
米国、メキシコ、カナダによるNAFTA再交渉の第1回会合が20日、終了した。メキシコ大統領選挙と米中間選挙を来年に控え、3カ国は交渉を加速することで一致した。
ただ、NAFTA域内での貿易赤字是正を求める米国と、自由貿易の意義を訴えるメキシコ、カナダとの見解の相違が際立ち、協議は進展しなかった。貿易赤字を自国の損失とみる米国から譲歩や妥協を導くのは難しく、目標の年内妥結は極めて困難だ。
ロシアとの不正疑惑や白人至上主義をめぐる発言などで支持率低下にあえぐトランプ政権の頼みの綱は通商政策での成果だ。米国第一主義を推進したバノン大統領首席戦略官の更迭は保護主義路線の軟化を期待させたが、トランプ大統領は通商法301条の適用も視野に中国による知的財産侵害の調査に着手し、北朝鮮問題で生じた米中の溝が深化しかねない。
NAFTA再交渉でも摩擦の火種がくすぶる。メキシコやカナダによる通貨安誘導を阻止する為替条項の導入や、自動車・自動車部品の米国での現地生産比率引き上げを狙った原産地規制の厳格化などを要望する。
ただカナダ、メキシコは米国にとって第1、2位の輸出相手国。米国が強硬路線を貫けば、米国産トウモロコシの最大の輸入国であるメキシコが報復措置を講じることも想定される。
また原産地規制により米国内で生産される自動車部品が増えれば、米自動車メーカーはこれまでのメキシコ産より割高な部品を調達することになる。米国は現在、自動車部品輸入の3割弱を人件費の安いメキシコに依存しているのが実情だ。
NAFTA再交渉は日系自動車・部品メーカーの事業戦略にも多大な影響を及ぼしかねない。拙速な議論は慎み、米国は真の国益につながる通商政策を選択してもらいたい。
(2017/8/22 05:00)
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