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工作機械のオーバーホール&レトロフィット

(2017/9/20 05:00)

業界展望台

古い工作機械よみがえらせる 精度復元、NCリプレース

 工作機械の高速・高精度加工や自動化、複合化が進み、その性能は向上し続けている。一方でユーザーにとって、古くても使い慣れた工作機械は重要な財産。またこれを含む既存の生産ラインは、企業が築き上げてきたノウハウの集大成とも言える。こうした古い機械の価値を生かすのが、オーバーホールやレトロフィットだ。

活況に沸く業界 短納期に需要

 機械は老朽化するにつれて精度が落ち、新品購入時の精度表の許容値から外れていく。こうした際に役立つのが、機械を分解して点検・修理し、新品の性能に復元するオーバーホールだ。

 レトロフィットは、数値制御(NC)装置のついていない機械をNC化したり、古いNC装置を最新のものに付け替えたりするなど新品購入時にはなかった付加価値を持たせ、古い機械を最新鋭機に変える。生産性向上を図りたいときなどに有効だ。

 現在、製造業の好調を受け、工作機械メーカー各社は生産に追われている。同様に、オーバーホール、レトロフィット業界もまた活況に沸いている。工作機械は受注から納入まで長ければ1~2年かかる場合もあり、短納期で機械を新しくしたい顧客にとってオーバーホール、レトロフィットは強い味方だ。新品に比べ安価なのもメリット。新製品投入などに伴い、生産ラインの仕様変更のための改造とオーバーホールとを、合わせて依頼するケースが増えているという。

 工作機械のオーバーホール、レトロフィットなどを主力とするスギヤマメカレトロ(岐阜県本巣市)の浅野博幸社長は「いったん受注が取れればリピート率は高い。いまの状況は大きなビジネスチャンスだ」と意気込む。同社にはいま、国内だけでなく海外の案件も数多く舞い込んでいる。およそ20~30年前に相次いで海外に生産拠点を作った日本企業の機械が、老朽化の時期にさしかかったのが要因だ。引き合いは中国、タイ、インドなどさまざま。浅野社長は、今後しばらくこの好況が続くと見込む。

ユーザーのオーバーホール・レトロフィット事例 

■三菱日立ホームエレベーター 生産ライン崩さず機械新しく

 三菱日立ホームエレベーター(同県美濃市)は個人住宅用ホームエレベーターや、グループホーム、保育所などの小規模建物用エレベーターを手がける。設計から製造、据え付けまで一貫して担うことで技術を蓄積し、安全性向上を図る。

  • 3台のMC。背後のスタッカークレーンが搬送を担う

 同社がオーバーホール、レトロフィットを依頼したのは、1992年から97年にかけて導入した三菱重工業製の3台のマシニングセンター(MC)だ。これらは、巻き上げ機の部品であるウォームギアケースと、万が一の落下を食い止める「非常止め」の部品「クワエ金」を加工してきた。特に巻き上げ機はエレベーターの振動や騒音を左右する心臓部分で、その部品には0.01ミリメートル単位の加工精度が求められる。

 これらのMC3台は老朽化により精度低下が進み、対応を迫られていた。だが新品への買い替えは、これまで構築してきた生産ライン内の連携を崩す恐れがあった。3台は1台のスタッカークレーンを共有し、最小限の段取りで生産できるフレキシブル生産システム(FMS)ラインを構成していた。

  • 生産ラインは自動化され、3台を作業員1人で担当できる

 同社はこのためスギヤマメカレトロに依頼し、2012~14年にオーバーホール、レトロフィットを実施した。菊池正法三菱日立ホームエレベーター取締役本社工場長は「生産システムはそのままで機械を新しくできた。まさにいいとこ取り」とほほ笑む。NC装置も最新にリプレースし、操作画面構成のカスタマイズや粉じんを流すシャワー機能の追加も行い、新品購入時よりも機能がアップした。

 製品の安全性を最優先する三菱日立ホームエレベーターは、安全を追求する試行錯誤の中で、多くのノウハウを培ってきた。これらを常に新しいかたちで生かす手段として、今後もオーバーホール、レトロフィットは大いに活用されそうだ。

使い慣れた機械に愛着

 オーバーホール、レトロフィットの利点は、価格や納期のほかに古い機械の剛性の高さが挙げられる。古い機械は使われている鋳物の品質が良いことが多く、特にベッド部分の剛性の高さが支持されている。

 さらに、使い慣れた機械で製造を続けられることもオーバーホール・レトロフィットの重要なポイントだ。古くても使い慣れた機械がいいというユーザーの思いは根強く、特に、いまほとんど新品生産されていない汎用機への需要は大きい。これらの機械は削る、穴を開けるなどの単独機能で、多くはNC装置も搭載していないが、段取り変えが容易な点で多品種少量や一品ものの生産で重宝されている。経験によって身に付けた感覚で作業できる職人には、効率が良いと好評だ。

 メーカーが廃業した、メンテナンスサービスを終了したというのもオーバーホール、レトロフィットを依頼する大きな理由だ。また大型機械や海外製のものは、手間とコストの面から新品購入よりもオーバーホール、レトロフィットが選ばれやすい。

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(2017/9/20 05:00)

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