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[ 化学・金属・繊維 ]
(2017/9/25 05:00)
バルクケミカル、石油精製などに展開
神戸製鋼所が世界初の大容量型マイクロリアクター(微細流路式化学反応器=用語参照)「SMCR」の海外展開に乗り出した。国内で1件受注し、試験導入も数件に上ったことから、海外でも顧客獲得を進める。従来のマイクロリアクターでは難しかった年間数万トンの大容量処理に適応する強みを生かし、合成樹脂をはじめとするバルクケミカルや石油精製、資源リサイクルなど幅広い業界に売り込む。
【積層構造】
国内では実用機の第1号がレアメタル(希少金属)の回収に使われ、試験運用も樹脂メーカーなどで数件進んでいる。これらの実績を踏まえ、海外展開にも力を入れる。学会などで開発成果をアピールするほか、海外に工場を構える国内メーカーにも採用を促す。
SMCRは反応場となる細い溝(流路)を刻んだ板を縦に重ねる積層構造が特徴。縦に重ねれば、装置の幅を広げなくても処理量を増やせる。また、通常のマイクロリアクターだと1枚の板上に平面的に配置する流路や注入口を、積層構造なら立体的に配置できるため、流路の形を柔軟に設計でき、板1枚当たりの流路の密度を高められる。この利点を生かして流路の本数を増やせば、処理能力が高まる。流路を長めに設計し、反応に長い時間がかかる物質に対応することもできる。
この結果、年数万トン規模の処理能力が必要で、反応時間も長いものだと30分間に及ぶバルクケミカルに適用できるようになった。金属の抽出・回収や二酸化炭素(CO2)の吸収にも使えるという。
【面積を大幅減】
従来主流だった撹拌式のリアクターと比べると、設置面積が大幅に減る。加熱用や冷却用の熱媒体を注入する流路を刻んだ板を積層構造に組み込めば、熱が効率よく伝わり、温度を均一に制御できるという利点もある。
これまでマイクロリアクターは、医薬品など少量生産で高付加価値のファインケミカルにしか使えないとされてきた。
神戸製鋼所は伝熱用のフィンを幾層も重ね、熱を効率的に伝える熱交換器の設計で培った知見で、この課題を克服した。
SMCRの導入費用は、同程度の処理能力を持つ撹拌式リアクターの3―5倍と高額になる。だが、同社の総合力を生かせば、配管などの付帯物と一体での提供も可能。加熱・冷却のための費用を含むトータルコストの低減や、省スペース化につながる仕組みを提案し、実績を伸ばしたい意向だ。
【用語】マイクロリアクター=板上に刻んだ幅数ミリメートル以下の流路に複数の流体を注入して反応させ、目的の物質を合成する装置。多くはY字形やT字形の流路の左右から別の原料を注入し、中央の交差する箇所で混合する。細い流路だと原料の分子が衝突する頻度が、撹拌式のリアクターより高まる。幅が細いほど流速も高まり、短時間で効率的に反応が進む。だが、反応に長い時間を要する物質では、この利点を生かせない。単位時間当たりの処理能力も、平面構造だと大容量化しにくい。
(2017/9/25 05:00)
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