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[ 科学技術・大学 ]
(2017/9/27 05:00)
東京医科歯科大学難治疾患研究所の清水重臣教授は、細胞内たんぱく質をリサイクルするオートファジー(自食作用=用語参照)を活性化し、がん細胞を細胞死に誘導する低分子化合物を発見した。ヒトのがん細胞を移植したマウスによる実験で、がん組織が小さくなるなど効果を実証した。特に膵臓(すいぞう)がんや卵巣がんへの効果が高かった。オートファジーによる細胞死を利用した新しい抗がん剤の開発につながる。28日からの日本がん学会で発表する。
現在多く使われる抗がん剤は、がん細胞の分裂時にデオキシリボ核酸(DNA)を傷つける。がん細胞の分裂速度は正常な細胞よりも速いため、DNAが多く損傷する性質を利用し、細胞死に導く。
ただ、この種類の抗がん剤は毛根や腸など活発に分裂している正常な細胞も傷つける課題がある。さらに正常な細胞は、DNAの損傷を見つけると細胞死を誘導するたんぱく質が備わっており、がん細胞よりも細胞死が起きやすい。
清水教授は約2万4000種類の低分子化合物から、オートファジー活性が通常の数十倍以上活発になるものを発見。ヒトのがん細胞を移植してがんを発症したマウスに投与すると、がん組織の体積が未治療時の12%にまで小さくなった。
また投与後4週の生存率は未治療のマウスに比べて治療したマウスは2倍高かった。低分子化合物の体内での動きを観察するとがん組織に集中しており、がん細胞に強く作用することを確認した。
発見した低分子化合物は膵臓がんや卵巣がんに特に有効だった。低分子化合物と結合するたんぱく質が多く存在するためとみられる。
【用語】オートファジー=細胞内の自身のたんぱく質を分解して再利用したり、有害なたんぱく質を分解したりする仕組み。この発見で、東京工業大学の大隅良典栄誉教授は16年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
(2017/9/27 05:00)