[ オピニオン ]
(2017/9/28 05:00)
中国経済の構造転換が今後どのように進むのか。中国共産党大会閉幕後の同国経済について、景気の先行きだけでなく自律的・持続的成長に向けた改革の行方にも、目をこらす必要がありそうだ。
5年に1度の中国共産党大会が10月18日から開かれる。これをにらんで同国政府が講じてきたインフラ投資などの景気刺激策が、党大会閉幕後に打ち切られ、反動で景気が落ち込むのではないかと警戒する声がある。世界第2位の経済大国だけに、景気が腰折れすれば世界経済への影響は避けられそうにない。
足元の経済指標からも、この間、成長をけん引してきた固定資産投資の息切れなど中国経済の変調が見て取れる。中央銀行に当たる中国人民銀行が金融引き締めの方向に動いていることや、政府が大都市圏の住宅購入にかかる規制を強化したことが背景にある。
中国経済は2008年のリーマン・ショック後も好調を維持してきた。政府が講じた総額4兆元の経済対策の効果だが、結果として同国は実需をはるかに上回る過剰な生産設備や不動産在庫を抱え込んだ。固定資産投資の抑制は、過剰な資本ストックの調整を急ぐ狙いからと見られる。党大会の閉幕後、こうした動きが加速する可能性は否定できない。
だが、懸念材料ばかりではない。中国の国内総生産(GDP)は1-3月期、4-6月期とも物価変動の影響を除いた実質で前年同期比6・9%増と、16年の年間成長率6・7%をわずかながら上回った。けん引役となったのは、政府のインフラ投資と個人消費だ。
このうちインフラ投資について専門家の間では、今後も景気の下支えになるとの見方が強い。アジア全域や欧州、アフリカ東部にまたがって広域経済圏を構築する「一帯一路構想」に関連する投資が続くとの指摘だ。
消費に関しても、インターネット通販の普及が購買を後押ししていることに加え、所得の増加に伴うニーズの高度化、多様化で高付加価値品やサービスへと裾野が広がり、今後も堅調に推移するとの見方がもっぱらだ。
供給サイドでもIT・情報通信関連や運輸関連などのサービス産業は高い成長率を示しており、経済のサービス化・ソフト化が進んでいると見られる。専門家の間では、固定資産投資に代わって消費やサービス産業が成長のけん引役を果たすため、党大会以降も景気の急激な減速は回避できるとの見方が強い。
景気の行方もさることながら、注目すべきは労働集約型の輸出産業に支えられてきた中国経済に、こうした主役交代がどのような変革をもたらすかだ。例えば固定資産投資が減速する中でも、自動化・省力化や品質向上を目的とした製造業の設備投資は活発化しているという。技術革新が進み、消費ニーズも変化する中で潜在的な成長力を高めようと、生産性向上や事業の高付加価値化を目指す動きが強まっている。
日本企業にはこうした変革が進む中国市場で、自らの存在感をどう示すかが問われる。
(宇田川智大)
(2017/9/28 05:00)