[ 政治・経済 ]
(2017/10/17 11:00)
牛肉輸入制限は継続協議
【ワシントン時事】日米の経済関係の強化について議論する日米経済対話の第2回会合が16日午後(日本時間17日未明)、米ワシントンで開かれ、それぞれの代表を務める麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領が会談した。日本政府同行筋によると、ペンス氏から日米自由貿易協定(FTA)の交渉開始に強い関心が示された。
ペンス氏はFTA交渉について、4月の初会合後の記者会見でも言及したが、会合の中で考えを示したのは初めてという。貿易赤字削減を重視するトランプ大統領が11月に来日するのをにらみ、米側がFTA交渉に関して具体的な要求を強めてくる可能性がある。
日本は貿易に関して、麻生副総理が環太平洋連携協定(TPP)の意義を説明した。米国のTPP復帰を求める日本は、FTA交渉入りに慎重な立場で、日米がアジア太平洋地域の貿易・投資に関するルールづくりを主導する観点から協議を進めたい考えだ。
会合後に発表した成果文書はFTAには触れず、米国の液化天然ガス(LNG)輸出やインフラ整備などの分野で経済協力を強化することを盛り込んだ。日本が発動した米国産を含む冷凍牛肉に対する緊急輸入制限(セーフガード)への対応は結論が出ず、継続協議していく方針を確認した。
会合では冒頭、麻生、ペンス両氏が、北朝鮮情勢の緊迫化を受けて、日米同盟の重要性が増していることを強調。ペンス氏が「経済対話が日米2国間の経済的結び付きを深めると確信している」と述べると、麻生氏も「経済対話を推進し、2国間の経済関係を大きく飛躍させる」と応じた。
このほか、対話の成果としては、農業に関して、米西部アイダホ州からのジャガイモ輸入や日本産生柿の対米輸出解禁を盛り込んだ。日本の自動車輸入手続きに関しては、一部試験を簡素化することで合意。経済協力分野では、高速鉄道などのインフラ整備、女性の活躍支援などに取り組むことでも一致した。
日米経済対話のポイント
一、米国は自由貿易協定(FTA)に強い関心
一、牛肉の緊急輸入制限(セーフガード)対応は継続協議
一、日本は自動車の輸入手続きを一部簡素化
一、米国産液化天然ガス(LNG)の輸出拡大で連携
一、高速鉄道などインフラ整備で協力
一、日本産生柿、アイダホ州産ジャガイモの輸入解禁
一、北朝鮮情勢受け、日米同盟の重要性強調(ワシントン時事)
日米経済対話の成果文書要旨
麻生太郎副総理兼財務相とペンス米副大統領が出席した日米経済対話第2回会合に関する成果文書の要旨は次の通り。
【貿易や投資のルール】
第三国による不公正な貿易慣行に対し、効果的な法執行などを行うための作業が進行中。日本産生柿、アイダホ産ジャガイモに対する制限解除などで進展が得られた。日本は輸入車の認証制度で米国産自動車の排ガス・騒音試験の手続きを簡素化する。日本は地理的表示(GI)制度について透明性・公平性を確保する。近い時期に2国間の貿易事項に関し、さらなる進展を達成するための作業を強化する。
【経済・構造政策の協力】
「3本の矢」のアプローチ(相互補完的な財政、金融および構造政策)の積極的活用を再確認した。国際開発金融機関の主要なステークホルダーとして、日米は持続可能かつ包摂的な開発を推進すべく緊密に連携していく。
【分野別協力】
日米政府はインフラ整備、資金調達、メンテナンス、高度道路交通システム(ITS)など交通分野の協力強化のための協力覚書の交渉を終えた。液化天然ガス(LNG)、民生用原子力、高効率石炭火力などのエネルギー案件で具体的な成果が近い将来発表されることを期待する。(ワシントン時事)
(2017/10/17 11:00)