[ オピニオン ]
(2017/11/6 05:00)
国連気候変動枠組み条約の第23回締約国会議(COP23)がドイツ・ボンで6日開幕する。6月にトランプ米大統領が地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したが、脱炭素社会の実現に向けた大きな潮流は変わらない。日本が主導して果たすべき役割は大きい。
2015年末のCOP21で採択されたパリ協定は、従来の京都議定書に代わり、すべての国が協調して地球温暖化対策に取り組む国際条約。オバマ政権時代の米国と中国が先陣を切り、16年11月に締結国数などの要件を満たして発効した。
採択後1年足らずでの発効は、国際条約として極めて異例だ。今回の会議では協定の詳細なルールづくりを進める。
京都議定書は先進国に温室効果ガスの排出削減量を割り振ったトップダウン型だったが、パリ協定は各国が自主的に温室効果ガスの削減目標を策定し、実践するボトムアップ型である。
ただ、知見がなく、排出量を正確に把握できない途上国もある。日本は温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」のデータ提供をはじめ、排出量の算出手法支援などを会議で表明する。
平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度C未満に抑えるため、パリ協定は温室効果ガスの排出量を21世紀後半に実質ゼロとする目標を掲げる。米国は中国に次ぐ世界2位の排出国。その行動と結果は、少なからず影響を与える。
トランプ氏の離脱表明は、大統領選から引きずるパフォーマンスの色彩も強い。米国代表団にはCOP21で協定の採択に貢献したメンバーが残っており、ルールづくり交渉に臨む。
米産業界に地球温暖化対策をビジネスチャンスと捉える先進的な企業が多数あることを鑑みても、国際社会からの孤立は避けたいはず。消極姿勢でも最低限、自国が不利にならないように交渉するはずだ。
米国の離脱表明で、日本に対する世界の期待が高まる可能性もある。米国がパリ協定に“復帰”するための道筋をつけておく必要もあるだろう。
(2017/11/6 05:00)