[ オピニオン ]
(2017/11/7 05:00)
奈良で文明が生まれたのも、桓武天皇の平安遷都も、徳川家康が江戸に幕府を開いたのも、森林というエネルギー資源があったから―。国土交通省河川局長などを歴任した日本水フォーラム代表理事の竹村公太郎さんの、地形から見た歴史の見解である。
4世紀頃、大阪周辺は湿地帯で、都のある奈良盆地は360度を山に囲まれた土地だった。だが平城京までの200年間で木を切り尽くし、手つかずだった現在の京都に都を移した。
当時は寒村だった江戸に本拠を置いたのは、戦国時代までに関西の木が切り尽くされ、はげ山だらけになったから。ただ関東も幕末までに切り尽くされた。そこに黒船が来航し、石炭と出会う。
当時のエネルギー自給率は100%だが、今は6%に過ぎない。竹村さんは「既存ダムの有効利用を進めるべきだ」と説く。例えば発電していない多目的ダムで水力発電を始めたり、洪水対策としてダムの高さの半分程度しか貯めない規則を変えたり、ダムの高さをかさ上げするなどして、発電量は大幅に増やせるという。
水力発電は燃料費無料の純国産エネルギーだ。放射性廃棄物も二酸化炭素も出さない。半世紀前までは主力電源だった水力を再認識し、利活用を進めたい。
(2017/11/7 05:00)