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[ 科学技術・大学 ]
(2017/11/16 05:00)
国立がん研究センターの放射線治療科は、脳に転移したがんに網羅的に放射線を当てる治療「全脳照射」の照射範囲や線量などの設定を人工知能(AI)技術の深層学習を用いて自動化する。17年度内の試験的稼働を目指す。
人為的ミスの防止や、条件設定にかかっていた時間の短縮につながる。研究がすすむと、乳がんなど他のがんへの応用も期待される。17日から開催する日本放射線腫瘍学会で発表する。
脳への転移は乳がんや肺がん、消化器がんなどで多く、神経症状や吐き気などを引き起こす。脳に転移したがんは散らばっているため切除が難しく、症状を和らげるための緩和療法として全脳照射が用いられる。
安全な照射には脳の形に合わせた照射範囲を設定し、脳に近い眼の水晶体前側への照射を避けて適切な線量を当てる必要がある。放射線治療科の小林和馬医師と医学物理士の脇田明尚氏らは、290症例のCT(コンピューター断層撮影装置)画像を活用し、放射線照射の中心点、照射角度、照射範囲の3要素を抽出。照射条件を自動で算出した結果、約8割の設定が問題なく活用可能だった。
現在1例当たり10分程度かかっている条件設定の時間が短縮できる。照射線量などの手入力による人為的ミスがなくなる利点もある。脇田氏は「AIを活用した治療法の開発が進めば、施設間でのがん医療の格差をなくせる。深層学習を使えば大部分を機械化できる可能性がある」としている。
(2017/11/16 05:00)