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(2017/11/27 05:00)
栃木県を会場に実施した「第55回技能五輪全国大会」の全競技が、26日に終了した。1337人におよぶ若手技能者は日ごろの練習の成果を存分に発揮すべく、競技に取り組んだ。競技をどうクリアするか試行錯誤して悪戦苦闘する彼ら、彼女らの姿からは、次代のモノづくりを双肩に担わんとする頼もしさが感じられた。そんな若き職人の熱い戦いの模様をお届けする。
《金属系》
会場内に工具で鋼板を打ち付ける音が鳴り響く。「自動車板金」は1枚の鋼板で自動車外板をイメージした製品を製作する。今回の課題はトラックをイメージした大型なもので、三浦公嗣主査は「これまで以上にパワーと持久力が求められる」と説く。
前回大会で敢闘賞だった日産自動車の井手寛太選手は「食事など体作りにも気を配った」と準備期間を振り返り、「本番では力を出し切れた。あとは結果を待つのみだ」と自信の表情を見せた。
『バチバチ』と音が響いて火花が舞う。「電気溶接」は複数の溶接技術で五つの課題をこなす。前回大会と競技時間に変更はない一方、「課題の難易度は増している」と競技責任者の藤井信之主査は強調する。豊田自動織機から初出場した片岡滉選手は「出場経験のある先輩らの指導のおかげで力を出し切れた」と話した。
女性第一号が誕生した「曲げ板金」は鋼板を時には手で、時にはハンマーで加工し、立体的な製品に仕上げる。一柳弘一主査は課題について「部品の接合方法をガス溶接からティグ溶接に変更した」と話す。マツダの山村実久選手は「溶接の工程でアルミニウムの歪みを抑えるのに苦戦した。ただ、緊張せずに臨めた」と振り返った。
《機械系》
「木型」は寸法精度プラスマイナス0.1ミリメートルを目指し、鋳物などのベースとなる型を製作する。設楽孝吉主査は「競技時間は30分減らし、全体的な難易度は下げた」と説明。一方「最大で4カ所アール形状が重なり合うなど難しい部分も用意した」と話した。前回大会で金賞から敢闘賞までを総なめにしたトヨタ自動車の高森靖夫指導員は「課題の傾向を踏まえ、訓練ではアール形状が重なり合う部分を多用した課題を与えた」と出場までを振り返る。
「精密機器組立て」は当日に課題が一部変更された。和田正毅主査は「工程の洗い直しをする柔軟な判断力があるかどうかを試している」と説明した。
デンソーの清水雄斗選手は「時間配分はうまくいった」と振り返った。清水選手は昨年に敢闘賞を獲得。金メダルを目指し準備してきた。壁谷公貴コーチは「時間配分などで本番を想定した訓練を積んできた。よくモチベーションを維持しここまでやってきた」と選手をねぎらった。
難易度が上がり、選手が苦戦していたのが「機械組立て」。課題である自動加工機の動作確認で、動作しないものが半数を占めた。難課題でありながらも選手は歯を食いしばった。最後の1分で、完成を告げる「できました」の声が各所から上がり、会場は拍手が鳴り続いていた。昨年に敢闘賞を獲得した、いすゞ自動車の山本秀平選手は競技時間内に課題を提出し「持てる力は発揮できた」と満足げな表情を浮かべた。
“世界への挑戦”がすでに始まっているのが「フライス盤」。今大会の選手の中から2年後に行われる技能五輪国際大会の候補を選出する。課題は穴加工や直溝などの要素技術を盛り込んだもので、石井尚正主査は「技術の基礎が求められる」と説明。世界で勝負できる若き力を見定めていた。
《電子技術系》
電気設備工事の腕を競う「電工」。課題のうち当日公表される部分の割合が昨年までの約1.5倍で、制限時間に間に合わない選手も多かった。だが清水洋隆主査は「もっと苦戦すると予想していたが、全体的によくできていた」と評価した。
昨年、銅賞を獲得した九電工の土屋翔太選手は、周囲の選手より早い時間に競技を終わらせた。競技後は落ち着いた様子で「接続箇所で減点がないよう注意して臨み、いつも通りやり終えた」と振り返った。
2人1組で自動生産設備を製作する「メカトロニクス」。1日目の課題を標準時間で終えたのは約40チーム中で2チームのみ。トヨタ自動車の大橋翔選手・森弘平選手組は、制限時間5時間のうち4時間43分台と余裕を見せた。日立ハイテクノロジーズの中澤洸介選手・村山駿太選手組は同4時間59分42秒ですべり込んだ。
また「電子機器組立て」は、電子機器の設計・試作から製品製造、修理まで総合的なモノづくりの力が試される。幅広い業種で必要となる技術のため出場希望者も多く、2次予選を突破した選手が今回の晴れ舞台に立っている。花山英治主査は「選手の設計、解析力が上がっている」と肌で感じていた。
《情報通信系》
技能五輪国際大会7連覇を果たした「情報ネットワーク施工」。スマートハウスの配線からやネットワーク構築、トラブルシューティングまでの力を競う。事前課題の3割が変更になり、25日の結果は26日に張り出されるため、指導員と選手は戦略を練りながら次の課題を進める。2016年は協和エクシオ、15年は関電工、14年はきんでんが優勝と、近年は3社の三つどもえだ。協和エクシオの中山拓也コーチは「コンマ何点の差が勝敗を分ける」とみている。3回目の出場となる同社の太田卓也選手は「練習通りにできた。今回は優勝が狙える」と自信を見せた。境田益知主査は「基礎とプラスαに厳しく踏み込んでいけるか」が鍵を握るとしている。
コンピューターとサーバーをつないでネットワークを構築する「ITネットワークシステム管理」。2日間の9時間で二つの課題を行う。2016年大会で優勝したトヨタ自動車から3選手を含む計9選手が出場。使用するソフトウエアやハードウエアは事前に告知されるものの、課題は公開されないため、選手らは〝ぶっつけ本番〟で挑む。大野成義主査は勝負を分けるポイントについて「できているつもりでも確認が大事。対応力も必要だ」と強調。日本電子専門学校の栗原優太選手は「課題は企業前提なので、学生からすると難しい。幅広い知識が求められる」と振り返る。
(2017/11/27 05:00)