[ オピニオン ]
(2017/12/6 05:00)
当該企業の不手際として片付けるのでなく、問題ある企業行動の背景が何かまでチェックしてもらいたい。
神戸製鋼所や三菱マテリアル、東レのグループ企業など大手素材メーカーの品質表示の不正が、次々と明らかになっている。広く使われる素材の場合、最終ユーザーが特定できないため影響は予想しきれない。
これが日本のモノづくりの信頼を揺るがすようでは困る。経団連が会員企業に自主的調査を求め、問題行為があった場合は速やかに公表するよう通達したのは適切な措置と言える。
当該の企業は原因を徹底的に究明し、再発防止策を講じなければならない。法令違反にまで至るケースは多数ではなかろう。しかし産業界全体に向けられた社会の不信を拭い去るには、問題行動の背景に踏み込んだ分析が必要だ。
デフレ経済と新興国企業との競争に苦しめられているメーカーの多くは、常に収益確保に負担を感じている。品質の維持・向上投資が十分かどうか、適切な人材の確保・育成はできているか、ユーザー企業から品質に見合う対価を得られているかどうか。企業を不正な行動に追いやる最も大きな理由は、こうした収益への圧迫だ。
日本メーカーは、今後も品質の高さで国際競争力を確保したい。そのためには品質を安売りしてはならない。例えば神戸製鋼所のケースは、もともと必要性能を上回る製品で契約し、やや品質が劣った時にも出荷することが常態化してきた。契約違反は許されないが、品質に見合う価格だったかどうかも点検すべきだろう。コストの重い過剰サービスは、取引を不健全にする恐れがある。
多くの企業が、現状を再確認する必要があろう。少なからぬ素材メーカーが品質の維持・向上コストに苦しんでいるようなら、商慣行の見直しや公的な支援も検討すべきだ。
日本のモノづくりにとって、品質への信頼は欠かすことはできない要素だ。問題が相次いだことを、産業界全体の反省と次の行動への契機にしたい。
(2017/12/6 05:00)