[ オピニオン ]
(2017/12/19 05:00)
政府は年内にも水素社会実現に向けた官民共有ビジョン「水素基本戦略」をまとめる。1次エネルギーの大半を海外の化石燃料に依存する日本にとって、水素はエネルギー安全保障の確保と温室効果ガス排出削減を両立する有力な資源だ。産業界の技術革新を促し、水素利用で世界をリードしたい。
基本戦略は、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を踏まえ、2050年までの水素利用の方向性を描くものだ。
企業や家庭での水素利用を増やすには、調達、供給コストの低減が欠かせない。一方で川崎重工業や千代田化工建設などは製造、貯蔵・輸送などの技術開発を進めている。こうした上流開発を加速し、コストを低減するには、需要拡大への道筋を示すことが重要である。
鍵を握るのが燃料電池自動車(FCV)と水素発電だろう。自動車メーカー、金融機関など11社が先週、水素ステーションの本格整備を目的とした新会社の設立に合意した。ぜひFCV普及に貢献してもらいたい。
次世代自動車の潮流は電気自動車(EV)に傾きつつあるが、欧米や中国、韓国などもFCV普及政策を維持する。世界を見渡せばFCV向けにまとまった水素需要が期待できよう。
水素を大量消費する電力分野では、川重や大林組などが神戸市の人工島ポートアイランドに建設していた水素発電設備を完成させた。水素ガスタービンで発生した電気を市街地に供給する世界初の実証試験を18年2月に始める。
基本戦略では、水素発電コストを液化天然ガス(LNG)火力発電並みに引き下げるため、水素調達量や発電容量などを明記する見通しだ。水素の製造、輸送、利用などサプライチェーン全体の技術開発に向けた投資意欲を引き出すためにも、定量的な目標を示す意義は大きい。
また、水素利活用の先進的取り組みを国内外にも強く発信したい。20年の東京五輪・パラリンピックは絶好の機会だ。まずはここに向けて官民一丸となって実行計画を固め、水素社会の一端を見せてほしい。
(2017/12/19 05:00)
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