[ オピニオン ]
(2017/12/21 05:00)
先週は与党税制大綱、今週は予算の政府案の発表。その合間を縫って経済団体や大手企業の役員懇親会。経済記者の年の瀬はイベントが目白押しだ。そんな中でも重きをなす行事がクリスマス。ロマンチックな聖夜には無縁でも、街のイルミネーションの華やかさが年末気分を盛り立てる。
日本のクリスマスは、欧米と大きく違うと昔から言われてきた。その傾向は年々、強まっているように思う。とくに12月23日が天皇誕生日として休日になってから、日本流の独自進化が加速している。
アニメーションやドラマのクリスマスの描写では、ほぼ間違いなくクリスマスツリーとケーキが登場し、サンタクロースにも高い確率で言及する。しかし教会やイエスには、お目にかからないことが珍しくない。メディアが宗教色を自主規制している部分もあるだろうが、そもそもクリスマスを祝う側に、宗教的な関心が希薄なのである。
大げさに言えば、今の子供らはクリスマスがイエス・キリストという異教の神(諸説あるそうだが)の誕生日だとは知らず、サンタさんにプレゼントをもらう日としか認識していない。ツリーは七夕の笹飾りの冬版であり、お菓子はひな祭りやお月見など他にも例があるが、プレゼントをもらえるというのが正月のお年玉と並ぶ特殊なイベントである。
できるだけ家族と過ごし、神に感謝を捧げる聖なるイベントは日本人にとっては正月だ。そのプレ・イベントとして、カップルや仲間と会い、フライドチキンを買う行列に並び、デコレーションケーキにナイフを入れる。日本型クリスマスの異色なところを挙げていけばきりがないが、何よりも特殊なのは「神の不在」であろう。そのことを異端視ししたり、不満を持つ人は、日本の社会では多数派ではない。
こんな風習が、他の非キリスト教国でどの程度、行われているのかは知らない。あるいはガラパゴス的な特殊な発展なのかも知れない。ただ「神なきクリスマス」を生み出し、楽しむ文化を誇るべきだと考える。
これまで日本型クリスマスの盛り上げに一役買ってきた23日の天皇誕生日は、来年の平成30年が最後となる。その後、聖夜のあり方は変わるかどうか。昭和天皇の誕生日は「昭和の日」として恒久化した。あるいはクリスマス・イベントと年末年始の海外旅行の関連業界から「休日を残して欲しい」という声が出てくるかもしれない。
(加藤正史)
(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)
(2017/12/21 05:00)