[ 政治・経済 ]
(2017/12/21 10:30)
【ワシントン時事】トランプ米大統領は20日、最重要政策に据えた税制改革法案が同日議会を通過したことを受けてホワイトハウスで記者会見した。「米史上最大の減税だ」と強調、「米国を再び偉大にする」と表明した。トランプ氏は、法案が所定の手続きを経て議会から送付され次第、署名。レーガン政権以来約30年ぶりの抜本的な税制改革が成立する。
トランプ氏の主要公約が実現するのは1月の政権発足後初めて。支持率低迷に苦しむ政権にとって大きな成果となる。
トランプ氏は「税制改革が意味するのは雇用、雇用、雇用だ」と力説。法人税減税などにより、「企業は(米国から)出て行かず、戻ってくる」と語り、米国の国際競争力が強化されると訴えた。
減税規模は10年間で1兆4560億ドル(約165兆円)。法人税率は来年に現在の35%から21%に引き下げられる。日本やドイツなどを下回り、主要先進国では最低水準に近づく。米国に進出している日本企業もメリットを受ける。
個人所得税も幅広く減税。最高税率を39.6%から37%に下げ、税負担が減る控除も拡充した。ただ、法人税減税が恒久化された一方、所得税減税は時限措置となった。このため、トランプ氏が主張する「中間所得層のための減税」かどうかに懐疑的な見方もある。
トランプ政権は、大型減税などにより米経済は「3%超成長の持続が可能」と唱え、減税による税収の落ち込み分を成長で賄えると説明している。しかし、米研究機関の分析によると、税制改革の成長押し上げ効果は年間で最大0・1ポイント程度と限られる。
早くも賃上げ・投資拡大表明 米企業、法人減税を歓迎
【ニューヨーク時事】米国で約30年ぶりとなる大幅な税制改革が実現する見通しとなったことを受け、一部の米企業から早くも賃上げや投資拡大が表明された。各社は改革の柱である法人税減税によって生まれる余剰資金を充てる方針。同様の動きが広がれば、米経済が一段と活性化する可能性がある。
「大変素晴らしい」。トランプ大統領は20日、ホワイトハウスでの演説の冒頭、通信大手AT&Tの発表を手放しで称賛した。同社は税制改革法案の議会通過を受け、来年に設備投資を10億ドル(約1130億円)追加するとともに、20万人超の従業員に1人1000ドル(約11万3000円)のボーナスを支給すると表明した。
金融大手ウェルズ・ファーゴも来年3月から最低時給を現行の13.5ドルから15ドルに引き上げると発表。航空機大手ボーイングも「税制改革によって世界の舞台でより良い競争ができる」(ミューレンバーグCEO)として、社員教育や施設整備などに3億ドルを投じる方針を明らかにした。
ただ、大幅減税による景気押し上げ効果が不透明な中、他の企業が追随するかは予断を許さない情勢だ。
(2017/12/21 10:30)