[ 地域経済 ]
(2017/12/25 05:00)
「地上634メートルからの落雪は、被害が大きい」―。世界一高いタワー「東京スカイツリー」(東京都墨田区)は今冬も落雪対策に力を入れる。建設工事時を含め9回目の冬を迎えたスカイツリーは、落雪被害が2009年から11件報告されている。被害を最小限にするため、67台の可動式監視カメラを設置するほか、スカイツリー専用に改良した雪払い作業用器具を導入し、作業員らが手作業でも雪払いを行う。(高橋沙世子)
東京スカイツリーの375メートル地点からは、H形鋼材のくぼみをふさぐ板状の「塞(ふさ)ぎ金物」、展望台屋根の外周全てに設置し雪を内側に滑り落とす金属板「パラペット」、着雪状況を観察する可動式監視カメラなどの落雪対策用設備が確認できる。頂上634メートル地点のゲイン塔には「仮設ネット」も設置。今冬から同ネットに撥水(はっすい)加工を施し、着雪氷対策を強化した。
作業員の手で雪を取り払う作業も行う。13年から導入が始まった「スイーパー」という器具は、棒の先端にゴムを装着。手近な位置で凹凸部分を中心に表面にたまった雪をかき出す。スイーパーで届かない高さの柱には「オムニスリング」というロープ状の器具を柱の半周に巻き付け、滑らせて雪をそぎ落とす。14年以降、ブラシタイプやのこぎり状器具などラインアップを追加し、雪の硬さや柱の形状によって使い分けている。
今冬からは、40度C程度の温水を作業員が噴射して雪を溶かす「小型洗浄機」も試験的に導入した。ノズルから温水を広範囲に噴射でき、これまで人手で届かなかった部分の作業性が向上する。作業員は「雪の量にもよるが、1回の降雪に対する50メートル地点から634メートル地点までの雪払い作業時間は最大で半分程度まで縮められる」と見通す。新器具の導入で、作業の業務効率化とタワー周辺の落雪被害の軽減に期待がかかる。
(2017/12/25 05:00)
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