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[ 科学技術・大学 ]
(2017/12/23 12:30)
2衛星、異なる軌道投入 初のミッション
三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は23日午前10時26分、地球温暖化の予測に役立つ気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度で周回する試験機「つばめ」を搭載したH2Aロケット37号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げた。しきさいは約16分後、つばめは約1時間48分後に予定の地球周回軌道に投入され、打ち上げは成功した。H2Aが1回の打ち上げで2基の衛星を異なる軌道に投入したのは初めて。
衛星2基はロケットの第2段に搭載。しきさいを最初に分離し、高度約800キロの円軌道に投入した。次に第2段を減速して降下させ、つばめを高度約450~640キロの楕円(だえん)軌道に投入した。
しきさいは可視光のほか、目で見えない紫外線や赤外線で大気や陸海を観測。太陽光を反射する雲やちり、すすなどの微粒子、積雪を捉えるほか、二酸化炭素(CO2)を吸収する森林や農地などの植物分布を把握する。観測データは温暖化の予測精度向上や、CO2などの排出抑制策に活用される。海面水温などは気象庁や漁業情報サービスセンター(東京)にも提供される。
つばめは通常のガス噴射装置に加え、小惑星探査機はやぶさと同じ、電気でイオンを噴射するエンジンを搭載。楕円(だえん)軌道から円軌道に移行して高度を徐々に下げ、約1年9カ月後には大気の抵抗が非常に大きい高度約180キロを1週間維持する予定。
衛星は高度が低いほど、カメラやレーダーで地上を詳しく観測でき、成果は将来の災害観測衛星などに役立てられる。(時事)
「しきさい」観測、CO2削減交渉に影響 気候モデル改良へ
2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標を掲げた。だが、日米欧などの研究者が気候モデルを作り、スーパーコンピューターで進める今世紀末の気温予測は2度程度の幅があり、基盤となる観測データの充実が求められている。
海洋研究開発機構の立入郁主任研究員は「気候モデルのばらつきが大きいと、二酸化炭素(CO2)をどれぐらい排出できるかという推定値にもばらつきが出てしまい、国際交渉の議論の前提が弱くなる」と指摘。衛星「しきさい」の観測データで予測精度が向上すれば、「厳しい削減目標での合意形成に役立つのではないか」と話した。
CO2やメタンなどの濃度分布を観測する衛星「いぶき」は09年に打ち上げられた。ただ、気候モデルの改良にはCO2を吸収する森林、農地などの植物分布や、太陽光を反射・遮断する雲、大気中のちり、すす、化学物質など微粒子の分布データも必要となる。
衛星による地表観測は雲や微粒子越しに行っており、しきさいで詳細なデータが得られれば、植物分布などのデータもより正確になる。千葉大の本多嘉明准教授によると、しきさいは直下だけでなく、斜め前方や後方も観測して農作物や樹木の高さを捉え、立体的な総量を把握できる。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書は、CO2などの排出量シナリオを4通り設定。最も削減した場合は今世紀末の平均気温が20世紀末に比べ0・3~1・7度上昇にとどまるが、逆に最も削減できなかった場合は2・6~4・8度上昇すると予測された。
各シナリオの2度程度の幅は、使った気候モデルによる違いで、立入さんは「しきさいのデータで改良した気候モデルの計算結果は将来の評価報告書に反映される」と話している。(時事)
(2017/12/23 12:30)