[ オピニオン ]
(2018/1/16 05:00)
「こんぴらさん」として親しまれる香川県琴平町の金刀比羅宮を参拝した。大抵の社寺は境内への動物の立ち入りを禁じているが、ここでは飼い主と785段の石段を登ってきた“今年の干支(えと)”たちに出会える。
境内には「金比羅参り」と書かれた袋を首にぶら下げた犬の銅像が鎮座している。江戸時代に「お伊勢参り」とともに「こんぴら参り」が盛んになるが、新幹線も瀬戸大橋もない当時のこと。江戸周辺から訪れるには長い時間と体力が求められた。
参拝が難しかった庶民は、自分の名前や住所を書いた木札や初穂料、道中の餌代を入れた袋を愛犬の首にくくりつけ、旅人に託して代参させたという。代参を果たした犬は「こんぴら狗(いぬ)」とたたえられた。現在も犬同伴の参拝が許されるゆえんだ。
金刀比羅宮の祭神は五穀豊穣(ほうじょう)や海上安全の神様である大物主。平安時代以降は仏教の水の守護神で、サンスクリット語のインド・ガンジス川に棲むワニを神格化したクンピーラ(金比羅)と結び付き「こんぴら」さんと呼ばれるようになる。
♪金比羅船々 追風(おいて)に帆かけてシュラシュシュシュ。船に揺られてワニの神様にお参りすると事前に分かっていたら、さすがの忠犬も尻込みしたことだろう。
(2018/1/16 05:00)