[ ICT ]
(2018/1/25 12:00)
米グーグルがITセキュリティー事業に本格参入する。親会社の米アルファベットがITセキュリティー子会社のクロニクル(Chronicle)を設立したと25日明らかにした。機械学習ソフトや高度な検索技術を駆使することで、企業の扱う大量のデータを他社のサービスに比べて高速かつ低コストに分析し、マルウエア(悪意のあるソフトウエア)といった脅威を高い精度で検知するサービスを提供する。
ネット広告を主要な収益源とするグーグルは事業の多様化を進めているが、成長著しいクラウドサービスではAWSやマイクロソフトの後塵を拝している。市場規模が1000億ドル(約11兆円)近くまで拡大しているサイバーセキュリティー分野で、収益確保を進める狙いがあるものとみられる。
クロニクルが提供するサービスは、企業の重要データを守るサイバーセキュリティー分析プラットフォーム(基盤)と、2012年にグーグルが買収したバイラストータル(VirusTotal)のマルウエア検知サービスの2つ。
新会社のCEOに就任したステファン・ジレット氏は公式ブログの中で、「情報の検索や回復、分析といった作業を、これまでのように数時間や数日単位ではなく、数分での実現を目指す」とコストパフォーマンスの高さを強調した。同氏はITセキュリティー大手、シマンテックの幹部やスターバックスで最高情報責任者(CIO)を務めた経験がある。
クロニクルは、きわめて困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される「ムーンショット」プロジェクトを手がけるアルファベットのX部門(旧グーグルX)から事業会社として切り出したもの。プロジェクト自体は16年2月から約2年間取り組んできた。Xからの事業分離は、医療・生命科学関連のべリリー、自動運転のウェイモに続いて3社目。
ロイターは、「アルファベットの資金力や顧客企業との関係を考慮すれば、新会社はシマンテックやパロアルトネットワークス、サイランスなど大手ITセキュリティーベンダーの脅威になる」と指摘する一方、「IT大手からの小規模の事業分離は必ずしも短期間での成功を意味しない」とのIT調査会社アナリストの声も紹介している。
(2018/1/25 12:00)