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[ エレクトロニクス ]
(2018/1/31 05:00)
【NECの新プラットフォーム「SX―Aurora TSUBASA」】
■小型スパコン、用途拡大■
科学技術計算など、これまで特殊な用途に限られた「ベクトル型」のスーパーコンピューター。世界唯一のベクトルコンピューターメーカーであるNECがこれを小型化し、新たな需要を掘り起こした。既存の気象シミュレーションなどから、ビッグデータ(大量データ)解析や人工知能(AI)といった領域へとスパコンの利用を広げた。
スパコンでは主流のスカラー型に比べ、ベクトル型は大規模なデータ処理が得意で、かつて世界トップの性能を誇った海洋研究開発機構の「地球シミュレーター」などに採用されている。一方で開発コストが高く、装置も大型であるため、従来の顧客は大学や研究機関が大半だった。
用途拡大に向けて目指したのが、性能は維持しつつ小型化しコストを抑えること。そのため、それまでは全て自前で開発してきたが「強みを持つ高性能計算に注力し、それ以外はオープンな環境を活用する」(システム開発担当の星宗王シニアマネージャー)という方針に切り替えた。
心臓部となるプロセッサーには、初めてメモリーを内蔵し、307ギガフロップス(毎秒3070億回の浮動小数点演算)の世界最高性能を持つコアを開発して8個搭載した。データをコアに転送するメモリー性能も毎秒1・2テラバイト(テラは1兆)と世界最速だ。
設計概念を一新したため「チャレンジングだったが、単一プロセッサー性能は従来比10倍に向上した」とエンジン開発担当の今野良展シニアマネージャーは手応えをつかむ。性能のアップで小型化を実現し、カード式のエンジンにプロセッサーを組み込めるようになる。その結果、デスクトップ型からデータセンター型まで、柔軟なシステム構成で提供可能になった。
低コストで気軽に使えるスパコンを産業界が使わないはずがない。汎用プロセッサーの性能向上にも陰りが見えつつあり、ベクトル型スパコンの時代が再来するかもしれない。(藤木信穂)
【製品プロフィル】
約30年にわたるスパコン開発の経験を基に作った、大規模データ処理のためのプラットフォーム。既存のアプリケーションとの親和性も高く、AIや資源探査、画像解析、セキュリティーなど幅広い用途が可能。開発に当たり、国内外の企業が参画する意見交換コミュニティーを設立した。3年間で1000億円の売り上げを目指す。
(2018/1/31 05:00)