[ 政治・経済 ]
(2018/3/10 13:00)
日本の政府と産業界は、米国による鉄鋼とアルミニウムへの輸入制限発動が決まったことについて、「安全保障を理由とした広範な貿易制限措置は多角的貿易システム全体に大きな悪影響を及ぼしかねない」(世耕弘成経済産業相)と懸念している。ただ貿易戦争への発展を回避するため報復関税の発動には慎重で、当面は日本製品の除外を働き掛ける方針だ。
日本の鉄鋼輸出のうち米国向けは5%程度。日本製品が輸入制限の対象になれば、政府は日本企業の被る損失や、世界貿易機関(WTO)ルール違反の有無や程度を見極めた上で、対応を決める方針だ。
米が2002年に鉄鋼製品の緊急輸入制限(セーフガード)を発動した際は、発動後に適用除外品が追加されるなど情勢が変化した。今回も「精査には相当時間がかかる」(通商筋)という。
トランプ政権は貿易相手国との2国間交渉で自国に有利な取引(ディール)に持ち込むのが基本戦略。「除外と引き換えに何を要求されるのか」(経済官庁幹部)と気をもむ声もある。世耕氏は10日にブリュッセルで開かれる日米欧貿易相会合の機会にライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と個別に会談し、輸入制限の対象から日本を除外するよう訴える方針だ。
産業界は懸念 鉄連会長「大変憂慮する」
進藤孝生日本鉄鋼連盟会長は「各国による保護貿易的措置発動の引き金となりかねないことを大変憂慮する」との声明を発表。米国で現地生産を手掛けるメーカーからも「米国で製造する製品などへの影響が懸念される。今後を注視したい」(三菱電機)との声が上がっている。
ただ報復関税など強硬措置を求める声は少ない。新日鉄住金出身の三村明夫日本商工会議所会頭は遺憾だとしつつも、「米国との対話、交渉に臨んでほしい」と訴えた。(時事)
(2018/3/10 13:00)