[ オピニオン ]
(2018/3/20 05:00)
外国人労働者に頼るだけでなく、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ロボットの活用など、人手不足解消にもっと知恵を絞るべきだ。
人手不足が深刻な産業の各分野について、外国人労働者の受け入れ拡大が議論されている。専門的・技術的な人材に限って入国管理法で定める在留資格を緩和する方向のようだが、安易な受け入れ拡大は安い労働力の流入を加速し、賃金の引き下げ圧力につながる。デフレ脱却にも支障を来しかねない。
一方で別の動きがある。東京都内のスーパーマーケットでは続々と無人清算レジが登場している。レジ打ちのパート労働者を減らす目的だ。当初は機器操作に抵抗を持たない若い世代が中心だったが、慣れるにつれて高齢者も利用する姿を見かける。スーパーだけでなく外食店舗やホテル、病院でも無人精算機は一般的になっている。
農林水産業ではドローン(飛行ロボット)での種まき、自動走行式のトラクターやコンバインが実用段階に入っている。これに加えて、野菜や果樹の育成・収穫に向けたロボット開発が盛んだ。
水稲と違い、大きさや規格がバラバラな野菜や果樹は自動化が困難とされてきた。それがセンサーや画像認識、AI技術の発達と低価格化で克服されようとしている。漁業や水産加工も同様で、省人化機器導入のハードルはかなり低くなった。
安易な外国人労働力の受け入れ拡大が、こうした技術開発の努力に水を差すことを恐れる。自動化機器やロボット導入は開発費がかかり、導入初期コストも重い。サービス業の前線では顧客に意識変化を求めるというハードルもある。しかし「外国人労働者の方が安くて手軽」という発想ではイノベーションが進まない。
人事異動期の引っ越し業者や連休中の宿泊施設、果樹の取り入れシーズンなど特定期間だけ人手が必要な分野もある。アルバイトを異分野のリレー方式でつないだり、人材派遣を活用したりする方法もあろう。民間企業の知恵を生かしたい。
(2018/3/20 05:00)