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[ 科学技術・大学 ]
(2018/3/26 05:00)
高エネルギー加速器研究機構が建設中の新型加速器「スーパーKEKB」が本格稼働した。前身のKEKB加速器を増強し、衝突点におけるビームサイズを20分の1に絞り、蓄積ビーム電流を2倍に向上。同加速器が持つ世界最高の衝突性能(ルミノシティ)を最終的に40倍に高める。秋ごろに実験をはじめ、素粒子物理学の「標準理論」を超える物理現象の発見を目指す。
スーパーKEKBは、電子ビームと陽電子ビームの衝突型加速器。各リングの周長は約3キロメートルで、ビームラインの深さは地下約11メートル。2016年に電子ビームと陽電子ビームを衝突させずに周回させる運転を開始。その後、最終的な形態に改造し、これらのビームを衝突させる段階に入った。
19日に電子ビームをメーンリングに入射し、21日には継続してビームを周回させる「蓄積」に成功した。今後は、陽電子ビームをメーンリングに入射し、蓄積して両ビームを衝突するための最終調整に着手する。
電子と陽電子を衝突させると、B中間子と反B中間子のペアなどが発生する。KEKBではこれまでに約10億個のB中間子対を生成した。スーパーKEKBでは、50倍となる約500億個のB中間子対などのデータを解析できる。
ルミノシティを高めるため、細く長いバンチ(電子や陽電子の集団)を大きな交差角で衝突させる「ナノ・ビーム方式」を採用。これはイタリアの研究者P・ライモンディ氏が発案した衝突方式で、これを本格導入する衝突実験は世界初。
そのほか、ビーム光学設計の変更や新型ビームパイプへの交換、新しい最終収束用超電導電磁石の導入、ダンピングリングの新設や入射器の改造などさまざまな装置を改良して搭載した。
(2018/3/26 05:00)