[ オピニオン ]
(2018/4/6 05:00)
工業製品の評価の軸は一つではない。違う方向から見れば、日本製品の新たな魅力を引き出す可能性がある。
公益財団法人の大谷美術館(東京都北区、旧古河庭園内)の「大谷美術館賞」は、材料表面の美的評価で優れた作品や技術を顕彰する。工業デザインの表彰制度が数多くある中で、ユニークな制度といえる。
2017年度の受賞の一つがJFE鋼板(東京都品川区)の新カラー鋼板『なでしこカラー』。シャープさと落ち着きを両立させたメタリック加工の中に、見る人の角度によって色調が変化する演出を取り入れた。光輝性顔料(パールマイカ顔料)を配向制御する独自技術がポイントだ。
普通のメタリック塗装はスプレーによる3層以上の塗膜となるが、同社の新技術は2層のロールコーター塗装で、低コストと高生産性も引き出した。今後は店舗の外壁などへの展開を狙っている。受賞はビジネスの後押しだけでなく「技術の賞と異なる視点での評価は、社員にとって新たな励みになる」と小倉康嗣社長は歓迎する。
また吉野工業所(東京都江東区)は、ガラスやジュエリーのような輝きを持つフェースパウダー容器で受賞した。優れたプラスチック加工技術で、顧客である化粧品メーカーの要望に応じて開発。内外のカットをずらしたり、金色の蒸着層を重ねたりする工夫で、光の屈折率を高めて高級感を引き出した。
同賞は2003年度に日本機械学会の機械材料加工部門で創設。後に財団が引き取ったという経緯がある。知名度は決して高くないが、メーカーにとっては身近な存在であり、賞を狙える企業の範囲は広い。
近年、サイエンスとアートの融合が注目されている。デジタル分野の成果が目立つが、日本が伝統的に強い材料技術と芸術の相乗効果が生まれれば、研究者やアーティストなど多様な人材を刺激するはずだ。
科学技術が生む豊かさは利便性だけではない。世界に通じる日本製品の魅力を、多面的に引き上げていきたい。
(2018/4/6 05:00)
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