[ オピニオン ]
(2018/4/11 05:00)
ヘルスケア分野で、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用が始まっている。サービスの質と利便性を維持・向上させながらコストを抑える切り札として、産学官挙げてデジタル化を加速することが必要だ。
日本の医療の質は世界でも優れたレベルにあるといわれる。1人当たりの病院数や受診日数などは世界的にみても高水準で、何より国民の平均寿命は世界一だ。しかし、高齢化が急速に進む中、従来の質や利便性を維持しながら、伸長する医療需要に対応するのは困難になってきている。
医療、介護、健康などのサービスの質や利便性を高めれば当然、コストは上昇する。とはいえ、増え続ける医療費を抑えるため、質や利便性を切り下げることも非現実的だ。
こうした相反する要求をクリアするものと期待されるのがデジタル化だ。医療・介護などの事務を効率化することによるコスト削減効果だけでなく、蓄えた情報を活用することで多額のコストを掛けずに、質や利便性を上げることが期待できる。
すでにIoTを活用して医療機器の稼働情報を分析し、計画的な予防・保守により装置の稼働率向上や停止時間の削減につなげている事例がある。またAIによる診断支援により、医師の誤診や見逃しなどを抑えて診断や治療の質を高めているケースもある。さらに個人の健康情報を可視化し、行動変容を促す製品・サービスなども出始めている。
ただデジタル化の投資効果が見えにくいままだと、普及が進まない。中小の病院・診療所などで電子カルテの導入が遅れているのは、このためだ。情報の活用により重複する医療行為を回避するなどの無駄の抑制や、個人の健康管理の促進など新たな価値を示す必要がある。
政府には診療報酬での評価見直しや補助金などの支援策拡充を求めたい。また医療機器メーカーには顧客目線の機器開発を促したい。社会全体でデジタル化の機運を高めていく努力が欠かせない。
(2018/4/11 05:00)