[ 商社・流通・サービス ]

JR貨物 再生・上場への道(上)2期連続の営業黒字

(2018/4/17 05:00)

  • 青函トンネルを走り抜ける貨物列車

JR貨物が2018年3月期の鉄道ロジスティクス事業で2期連続の営業黒字確保をほぼ確実にしている。経営改革が功を奏し、モーダルシフトの追い風も受けて、貨物鉄道事業の再生に、ようやくめどがつきつつある。念願の株式上場にも視界が開けたが、ガバナンス強化や一層の収益改善、最先端技術を活用した業務刷新、安全性向上の投資など課題は山積み。上場に向けて社内の各種改革も正念場を迎えている。(3回連載)

【長年の悲願】

JR貨物単体の鉄道事業は、17年3月期に営業損益で5億円の黒字を計上した。バブル崩壊以後、初となる黒字転換。18年3月期は収支トントンで若干の黒字、19年3月期は4億円の黒字を目指す。

不動産や子会社を含む連結では17年3月期に100億円程度の経常利益を確保したが、本業は苦戦が続いた。田村修二社長は「苦労したが黒字化で(貨物鉄道の)存在が認められるようになった」と喜ぶ。

貨物鉄道は旧国鉄の慢性的な赤字要因の一つとされ、廃止論もあった。事業再生はJR発足以来、長年の悲願であるとともに上場の必要条件だった。

【基本運賃10%増】

とはいえ、黒字は修繕費などを安全運行に必要不可欠な部分に極力抑え「薄氷を踏む思いで」(永田浩一取締役)達成したものだ。機関車の約3割は、いまだ国鉄から継承した車両を使っている。安定して収益を確保するには、老朽設備の更新や技術革新投資が欠かせない。

このため「次世代に備える」(田村社長)とし、10月から発足以来初めて基本運賃(賃率)10%引き上げに踏み切る。JR貨物の運賃は許可や届け出が必要ない公示運賃だ。実態は荷主や通運事業者との相対交渉で決めており、物流各社の値上げ状況をにらみながら「(10%は)交渉できる範囲であろう」(犬飼新取締役)と見て、理解を求めていく。

【財務強化急ぐ】

JR貨物が上場を目指す上で、利益面以外にも「財務をどう強化していくか」(田村社長)は課題だ。上場基準に合わせるため会計レベルの向上も急務。3月には経営自立計画に基づく、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)からの700億円の無利子貸し付けが終了し、協調融資で借り換えを実施した。持続的な成長を支えるためにも、資金政策は重要だ。

19年3月期は経営自立計画の最終年度を迎える。鉄道を含めて安定的に利益を計上できるようになり、リスク管理や法令順守、財務など必要な組織体制を整えた先に、JRグループで5社目の上場が現実となる。

(2018/4/17 05:00)

建設・エネルギー・生活2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

ゴム補強繊維の接着技術

ゴム補強繊維の接着技術

事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント

事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント

集まれ!設計1年生 はじめての締結設計

集まれ!設計1年生 はじめての締結設計

これで差がつく SOLIDWORKSモデリング実践テクニック

これで差がつく SOLIDWORKSモデリング実践テクニック

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン