[ オピニオン ]
(2018/4/17 05:00)
日米首脳会談が米フロリダ州で17、18日(現地時間)に開かれる。日本政府は通商分野で、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰に向けた環境を醸成していくことに力を注ぐべきだ。
米は日本との自由貿易協定(FTA)交渉入りを狙って、日本への圧力を強めている。米通商代表部(USTR)は、対日FTAの協議開始を打診し、日本側の感触を探ってきているという。為替条項や輸出の自主規制など「管理貿易」を求めてくる可能性もある。
米は、韓国との通商交渉でも、米韓FTAの再交渉で合意した。これは安全保障を米に頼る韓国に在韓米軍撤退をちらつかせ圧力をかけて、譲歩を迫った。鉄鋼で25%の追加関税賦課を免除する一方、自動車分野で米の要求を韓国にのませた。
もっとも、米側も、対日FTAのごり押しだけではすまされない事情もある。「対中貿易摩擦」で農業への影響が懸念されるためだ。米が中国の知的財産権侵害に制裁関税をかけることを表明したのに対し、中国は大豆やトウモロコシなど米の農産品に報復関税をかけると持ち出した。米国産牛肉も厳しい状況だ。米を除くTPPの参加11カ国によるTPP11が発効すれば、豪州など参加国の冷凍牛肉の関税は9%に下がる。米国産牛肉の関税は38・5%で価格で差がつく。11月の中間選挙を控え、トランプ米大統領が票田で支持者の多い農業州に配慮する必要がでてきた。
こうした中、トランプ米大統領が対中けん制策として、TPPに目を向ける可能性がある。もともと米はTPPで牛肉など農産品の輸出を増やせると期待していた。支持者を増やせると考えればTPP復帰を考えてもおかしくない。
日本政府はここに活路を見い出すべきだ。もちろん、米のTPP復帰は簡単ではない。米政権が求める再交渉には、参加する11カ国も否定的だ。ただ、世界の成長の基盤となる自由貿易と多国間協調が危機にさらされている。安倍首相は、自由貿易の重要性をいかに訴えるかがカギとなる。
(2018/4/17 05:00)