[ オピニオン ]
(2018/4/18 05:00)
石油化学工業協会は、業界が抱えるプラントの定期的な設備補修・更新工事(定修)問題の解決へ動き出した。日本の製造業全体を支える石油化学産業の地盤沈下を一刻も早く防がなければならない。
定修問題への対策を検討してきた石化協のタスクフォースがこのたび答申をまとめて、所管の経済産業省へ提出した。
答申の柱は、プラント定修時期の分散化を可能にする規制緩和の要望だ。石化コンビナートの中心をなすエチレンプラントの定修間隔は主に2年または4年で、高圧ガス保安法などで完工期限まで定められている。
定修時期は工事作業のしやすい春秋に集中する傾向にある。近年は設備の老朽化が進んだことで、1回の工事期間は必然的に長くなる。政府の「働き方改革」の一環である残業時間の上限規制も追い打ちをかける。結果として、各社の定修期間の重複や近接化を招いてしまう。工事を行う協力会社の人員やクレーンなどの資機材の取り合いが全国で発生。人手不足も相まって今や事態は深刻だ。
この定修問題は合成樹脂を多く使用する自動車や電機など産業界全体に及ぶ。もとより団塊の世代の大量退職で現場力が低下する中、定修問題で十分なメンテナンスを施せなくなれば製品の品質低下や供給停止が続出しかねない。定修の過度な集中は需給バランスを崩して市況の乱高下を誘発するため、需要家にとっても避けたい話だろう。
定修時期分散化への近道は個社や地域間での時期調整だが、独占禁止法の壁が立ちはだかる。同業他社との時期調整は「生産調整」や、工事会社などの「不利益」になると見なされ独禁法違反の可能性がある。答申でも「公正取引委員会当局の理解と承認が不可欠」と言及する。ただ、答申を提出した経産省からは「ハードルは高い」との厳しい意見を受けたという。
基幹産業の地盤沈下が国益を損なうのは間違いない。特定の会社が「不利益」を被らないよう最大限配慮しつつ、関係者が知恵を出し合い定修問題を早期に解決してほしい。
(2018/4/18 05:00)
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