[ ICT ]
(2018/5/4 05:00)
米Hewlett Packard Enterprise(HPE)の日本法人である日本ヒューレット・パッカードが先頃、人工知能(AI)を活用した製品・サービスを発表した。企業向けITインフラ向けの製品・サービス事業に特化したHPEのAI戦略とはどのようなものか。
HPE日本法人が新製品の発表とともにAI戦略を説明
「HPEはこれまでもこれからも製品やクラウド環境、エッジコンピューティング向けにさまざまなAIを活用していく」――。日本ヒューレット・パッカードの本田昌和ハイブリッドIT事業統括ハイブリッドIT製品統括本部 統括本部長は、同社が先頃開いたAI搭載の製品・サービスの発表会見でこう強調した。
同社が発表したのは、AI導入に向けたコンサルティングサービス「HPE Artificial Intelligence Transformation Workshop」と、ディープラーニング(深層学習)向けコンピューティングシステム「HPE Apollo 6500 Gen10 System」。前者は、HPEのサービス事業部門である「HPE Pointext」のAIに関する専門家がAIやデータ分析に最適なプラットフォームを設計するサービス。後者は、米NVIDIAのGPU「Tesla V100」を8台内蔵した4Uサイズのラックマウント型コンピュータである。
これらの発表内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは新たな製品・サービスの説明の前に本田氏が紹介したHPEのAI戦略に注目したい。
まず、HPEにおけるAIの認識については図1を示しながら、「今、AIの中で最も注目されているディープラーニングの分野では、アマゾンやグーグル、マイクロソフトなどが業界をリードしており、その適用分野も画像やデータ分析、音声、センサー、セキュリティなど広範囲に及んでいる」と説明。そうした中で「AIを活用したHPEならではの製品・サービスを提供していくとともに、AIを活用するお客さまにとって信頼できるパートナーであり続けたい」と、本田氏はHPEのAI事業に対する姿勢を説明した。
AIサービスを導入した顧客のITインフラを支援
本田氏はさらに、HPEのAIに対する取り組みを、AI搭載製品を意味する「AI for IT」、ビジネスとしてのAIである「AI for Business」、将来のAIの方向性を示す「AI for the future」の3つの切り口で説明した。その内容は図2の通りで、AI for ITでは「AIの活用によるIT運用管理の生産性向上」、AI for Businessでは「統合AIソリューションの提供によるビジネスでのデータ利活用支援」、AI for the futureでは「HPEおよびパートナーの最新技術による性能革新」をテーマとして掲げている。
以上が、本田氏によるHPEの基本的なAI戦略の説明だが、他のAIベンダー、すなわち同氏が図1で業界リーダーとして社名を挙げたところとの差別化戦略が分かりにくかったので、会見の質疑応答で改めて聞いてみた。すると、本田氏は次のように答えた。
「業界リーダーとして社名を挙げたところは、いずれもAIそのものを活用したサービスを生業としてビジネスを展開している。それに対し、HPEはAIそのものを活用したサービスを提供するのではなく、そうしたAIサービスを導入されたお客さまのITインフラを中心にご支援する役目を担っていく」
その意味では、今回発表したコンサルティングサービスやコンピューティングシステムが、HPEのAI戦略を象徴したものとなる。これがすなわち、HPEが展開する“ITインフラ屋”ならではのAI戦略といえそうだ。(隔週金曜日に掲載)
著者プロフィール
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2018/5/4 05:00)