[ 政治・経済 ]
(2018/7/7 05:00)
【ワシントン=時事】トランプ米政権が相次いで実施する輸入制限措置の次の焦点は、自動車と同部品に対する追加関税だ。今週の世界貿易機関(WTO)の会合では、日本や欧州連合(EU)、中国など40を超える国・地域の当局者が強い懸念を表明した。自動車関連は米国最大の貿易品目で、国内で輸入価格が上昇すれば、内外のメーカーや消費者にまで広く影響が及ぶ恐れがある。
米商務省は5月、通商拡大法232条に基づき、輸入自動車と同部品に関する影響調査を始めた。輸入急増が「安全保障上の脅威」と判断すれば、追加関税を課す可能性がある。トランプ大統領は11月の中間選挙の前に正式表明したい意向とされ、20%の関税上乗せを念頭に置いている。
自動車関連は米国の輸入全体の15%強を占める最大品目。232条を根拠に先に輸入制限の対象とした鉄鋼(同1%強)に比べると、インパクトは計り知れない。自動車を主力産業とする日本、EU、韓国などの政府やメーカーなどは反対する書簡を米商務省に提出した。19、20両日にワシントンで開かれる公聴会では、日本やEUの政府関係者が意見を表明する予定だ。
輸入部品の関税が大幅に引き上げられれば、米国産車自体も値上がりする可能性があり、米国内でも輸入車・部品への追加関税に慎重論は根強い。ただトランプ大統領は意に介さず、追加関税をちらつかせてEUが外国製乗用車に課す現行10%の関税撤廃を要求する。
自動車を標的にした輸入制限は主要国を巻き込み、「貿易戦争」の泥沼化を招きかねない。摩擦激化を避けるため、ドイツのメルケル首相は5日、関税の引き下げをEUとして「交渉する用意がある」と宣言した。既に関税ゼロの日本は譲歩の余地が限られており、7月に始まる新たな日米貿易協議(FFR)では、難しい対応を迫られそうだ。
(2018/7/7 05:00)